ふるさと農政は食品EC市場の1割に相当
ふるさと納税サイトが公開している返礼品の人気ランキングを見てみると、どのサイトも肉、海産物、米、飲料、果物など食品のオンパレードである。ティッシュペーパー、トイレットペーパーなど食品以外はごく僅か。少なく見積もっても2000億円以上の食品が納税者の手に届いている。
経産省発表による2021年の食品のEC市場規模は、約2兆5000億円。つまり返礼品の調達費用は食品のEC市場規模の約1割に相当する。だが、計算上EC市場規模には含まれていない。
食品のEC市場規模には、ネットスーパーやミールキット、調味料などあらゆる商材が含まれている。返礼品の調達費用がその約1割相当というのは冷静に考えて大きい規模だ。
この状況をどう見るか。全国民はまだ、ふるさと納税を行っていないだろう。しかし2000億円という規模感から考えて、ECを通じて地方の食品を購入している消費者は一体どれくらいいるのだろうかと思ってしまう。このことをポジティブ/ネガティブ両方の目線から捉えてみたい。
ふるさと納税がEC消費を脅かすか
ポジティブ目線で捉えるならば本制度で助かっている地方の事業者は多いと見る。返礼品であれ、ECであれ、出荷できればどっちでも構わないと考えるのは自然だろう。
ふるさと納税を通じて自社商品の露出度が増せば、長い目で見て地方の事業者にとってはプラスに違いない。
一方、ネガティブ目線で捉えれば、”地方産品はふるさと納税で手に入れるものだ”という感覚が消費者に根付くと、ECのビジネスモデルを脅かしかねない事態と思う。
例えば返礼品を起点にクロスセルやリピート購入を促すといったことで、EC側にプラスの効果をもたらす仕組みの確立は一案かもしれない。しかし、もともと制度自体に否定的な見解が存在するため、そもそもこれはデリケートなテーマである。
国の制度が絡むだけに軽々しいアイデアは慎んだ方が良いかもしれないが、とはいえ今の状態が継続すれば筆者個人は若干ネガティブなポジションだ。
今後のあり方について業界内での議論が必要だと考える。