2023.03.31

【データに見る「ECの地殻変動」】<第13回>人流増加で明暗を分けるEC企業

2020年に新型コロナウイルス感染症が広がり日本全土に緊急事態宣言が発令された。それに伴う巣ごもり消費の影響でEC市場が大きな恩恵を受けたことは記憶に新しい。2020年の物販系EC市場規模は12兆2333億円と前年比で21.71%の伸長率。それまでは10%以下の伸長率であったため伸びの著しさが際立った。筆者の試算ではコロナによるEC市場の押し上げ効果は約1兆4000億円。人流とEC市場は相関関係にあり、リアルチャネルが充実する日本は特にその度合いは強いと見る。

コロナ対策の徹底と人々のコロナ慣れにより、2022年の人流は2019年に近い水準に戻っているようだ。コロナ対策の一環で内閣官房は、NTTドコモによる協力のもと人流のデータ化を日々実施している。

データはコロナ前の2019年1月7日分から、①日別 ②都道府県別 ③時間他別(朝・昼・深夜)――で集計されていてコロナ前後の変化を捉えやすい状態だ。筆者独自で集計してみたところ確かに人流の戻りが数字でハッキリとわかった。

2019年から2022年までの日別データを集計して全体平均を求めた後、2019年を100として2022年までの相対値の推移をグラフ化してみた。100→72.2→69.3→80.1と明らかに上昇している。時間帯別で見てみると午前8時では100→78.6→80.9→88.5。午後3時は100→77.4→80.2→6.9と平均を上回っている。

どうやらリモートワークは減っていて出社する人が増えているようだ。反面深夜は100→58.6→42.7→62.0と戻りが鈍い。数字だけ見れば飲食店への人流の戻りは限定的かもしれない。



他のデータはどうか。一般財団法人日本百貨店協会発表の2019年の百貨店売上は5兆7500億円。インバウンド消費の減少もあって2020年、2021年は4兆2200億円、4兆4200億円と減少したが、2022年は4兆9800億円とV字回復気味。

特に美術・宝飾・貴金属の売上高は、2019年を大きく上回っている点がリベンジ消費を象徴していて面白い。2019年超えとまではいかないが、2022年の婦人服の売り上げが8794億円と他のカテゴリーより伸びが高く、女性が真っ先にリアルチャネルに戻っていることがわかる。

本紙でもたびたびリアル回帰という言葉が登場する。リアルチャネルを重視する小売企業がオムニチャネルを強化する動きが見られるが、これは必然の流れだろう。とすれば気になるのはEC市場。筆者は2022年の市場規模を4~5%程度の伸びに止まると予測する。

2023年に入ってからの人流も引き続き増加中と見られるため、2023年以降のEC市場の大幅な伸びは期待できそうにはない。そういった現状をEC市場関係者はどう捉えているか気になるところだ。

コロナでEC市場は活況を呈したわけだが、今後につながる施策を各社どう取り組んだのか興味がある。流れにまかせて消費者ニーズに対応しただけなら単に瞬間最大風速を計測したに過ぎない。

逆にチャンスと見てニーズを永続化させる施策を講じた企業は、人流が戻る状況下でもEC売り上げは落ちていないのではないか。2023年以降両者の差が大きく数字で表れてくる気がしてならない。まだ間に合うので起死回生の策を講じてほしいと願うばかりだ。












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