2023.03.01

【データに見る「ECの地殻変動」】<第12回>都道府県別EC化率に思う原点回帰

前回のコラムでは年齢別のEC化率の算出結果を披露し「とても興味深かった」とのコメントを多数いただいた。そういう反応はコンサルタント冥利(みょうり)に尽きる。と同時に前職にて経産省の裏方としてEC市場調査を担当していた際に、「EC化率にもっとバリエーションを持たせられないか」と考えていたことを、ふと思い出した。そこで今回はEC化率の掘り下げ企画の第2弾をお送りする。以前からチャンレンジしたいと思っていた「都道府県別EC化率」の推計を行ってみた。

5種類のソースを駆使してオリジナルの推計方法を思いつく(恐れながら独自ノウハウなため内容は非公開)。「当社の売り上げは大都市圏に集中している」と以前ある方から伺ったことがあり、推計結果はそうなるだろうと事前予想。

2021年を推計したら上位から東京、神奈川、愛知、大阪、千葉、福岡、京都、埼玉と予想通り。ちなみにこの上位8都府県がEC化率の平均値8.78%を上回った。なお、他県が下回っているのは別段悪いことではない点を誤解なきよう。



さて都道府県別のEC化率はどのような要素と相関があるのだろうか。推計に使用したパラメーターのデータ内容は推計結果に直接反映されるわけでそれ以外の要素を考えてみた。最終的に行きついたのが結局のところ「都道府県別の人口の多さ」。ヨコ軸をEC化率、タテ軸を人口で散布図を作成してみたら比較的分かりやすい近似曲線が描き出された。人口との相関なんて「当たり前っぽくてつまんない」と思うことなかれ。考えてみれば意外と奥が深い。


消費喚起はリアル?


人口の多さは何を意味するかだが、筆者は消費の刺激の大きさと見る。理由はリアル店舗網の充実。都市部には多彩なリアル店舗がにぎやかに存在し、消費者の購買意欲を刺激する。

しょせんといっては何だが、EC化率は10%未満。大半はリアル店舗経由での購入だ。リアル店舗でも買うし、そこで知り得た情報をもとにECでも購入する。まさにオムニチャネル/OMOが重要だといわれていることと一致する。他にも思いつく理由はあるがこれが筆者には一番しっくりきた。

EC化率は今後、そうは伸びないと筆者は予想している。その認識のもと、事業者目線で捉えれば前回コラムの通り50代以上には商機がありそうだ。

加えて上述の通り都市部以外には潜在的なECニーズがまだ多く残っているように思う。ただし潜在ニーズの掘り起こしが簡単ではないことは容易に想像がつく。どのように対処すべきか。オーソドックスだが自社製品の優位点や特徴、ブランドの世界観を、奇をてらわずストレートに伝え続けるしかないと思う。

ネット広告、SNSによる自社の情報発信など、いろんな方法がある。だがそれらはあくまでもテクニカルな手法。EC業界はこの3年間、良くも悪くもコロナに翻弄(ほんろう)された。外的影響を受けやすいがゆえ、テクニカルな手法がある意味では功を奏したと筆者は捉えている。

しかし、市場参入者が激増する中、今後は原点回帰が重要と感じる。テクニカルアプローチはさておき、自社製品のどんな魅力を消費者に訴求していくべきか、原点に返って見つめ直す。都道府県別EC化率からそう気付いた。











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