米菓の製造・販売を手掛けるもち吉は、2023年2月期の通販売上高を前期比横ばいの25億円と計画している。増収を続けてきたが、消費者のオフラインでの消費行動が戻ってきていることを受け、前期並みの売上高を確保するための取り組みに注力している。通信販売部門の川端宣智部門長は、「今期は手堅く守りの通販を展開した」と語る。川端氏に今期の状況や原材料高騰対策などを聞いた。
コロナ動向が業績に直結
――2022年はコロナのワクチンが普及したこともあり、消費者が街で買い物をするシーンが目立った。貴社も通販や店舗に影響を受けているのか?
影響は受けている。2022年は店舗売上高がグッと伸びた。反対に通販売上高はコロナ特需があった2020~2021年と比較すると、成長は少し穏やかになった。これまで店舗に来れなかった人たちが、2022年はこぞって店舗で商品を購入して下さっているのだなと実感している。
売上高の推移で見ると、第2四半期(2022年3-8月期)の通販売上高は前年同期比5%減だったが、第3四半期から持ち直している。特に11月からは順調で、11月単月の通販売上高は、前年同月を超えることができた。
――第3四半期から順調な理由は?
主に二つあると捉えている。一つ目は昨年も販売した「おやついちばん」の販売を再開したからだ。「おやついちばん」は当社の人気商品を複数種類同梱した商品だ。「おやついちばん」は段ボールに入れて簡易包装で発送する。
ご家族に贈ったり、ママ友会の茶請けとして使用されたりと、いわゆる「カジュアルギフト」として重宝されている。「おやついちばん」を始め、当社の商品を知ってもらうために、地味だと思われるかもしれないが、DMとメルマガの送付には力を入れている。DMは1年に10回は送付しており、メルマガは週1回のペースで最新情報を盛り込んで配信している。
売り上げが順調に推移した二つ目の理由だが、それはテレビ局とコラボレーションした商品を開発できたことだ。2022年の夏に、FBS福岡放送のローカルテレビ番組「地元検証バラエティ福岡くん。」で当社の商品が紹介された。「もち吉の缶、何に使っていますか?」とアンケート調査を取り、その回答を番組で紹介するというものだ。
当社は商品を缶に入れて配送するのだが、ありがたいことに顧客は缶を捨てるのではなく、裁縫箱やおもちゃ箱、子どもの宝物箱入れとして利用してくれている。こういった声をFBS福岡放送さんがキャッチして企画にしてくれた。商品は単に消費目的だけではなく、付加価値を付けて販売することが大事だということが分かった。
このことを受け、当社とFBS福岡放送でコラボレーションした商品「金のコラボカンカンスペシャル 特撰詰め合せ」を企画・販売した。
同局のキャラクターである「福岡くん」のロゴを入れ、金色の目を引く缶に仕上げた。実際にテレビ放送の反響は大きく、このコラボレーション商品は抽選で当たった人にプレゼントにしたが、申込者が殺到した。それ以降、予約限定販売を設けているが、毎回即完売にいたっている。
テレビ放送は九州エリアのみだが、それでも多くの人からの購入につながっている。個人的見解だが、「もち吉の名前は知っていたが、実際に購入したことがない人」「もち吉の商品を一度購入したことはあるが、それ以降購入していない人」にきちんとリーチできているとみている。
この商品を販売できたことで、オフラインの動きが活性化している中で、確実に通販売上高増加の一助になった。
――2022年は小麦粉、砂糖、食用油などの原材料が高騰している。貴社の対策は?
値上げと社内努力で調整している。当社も今年、下4桁をゼロにする値上げ施策を実施した。一例をあげると1256円の商品を1300円に値上げした。商品によっては100~200円ほど値上げしたものもある。
このほか、資材なども見直した。当社の看板商品でもある缶や段ボールなどを耐久性はそのままに薄くしたりして、コストを削減できるように調整した。