経営者がM&Aをするケース
通販EC業界の特徴として、若い経営者が多く、事業継承で悩んでいる事業者は少ないと思われます。そんな中でも、事業の悩みや成長性に不安を感じてM&Aをするケースが多いという印象を受けています。
若い経営者の会社は、社長が1人で運営しているところや3人や5人未満で取り組むところが多いです。しかし、サイト開設後の初動は良くても、売り上げを1億円以上に成長させていくことが今のリソースでは難しいと感じた場合や、外部環境に左右されやすいなどの壁に途中でぶつかります。アマゾンや楽天といった大手ECモールの存在だけでなく、参入障壁が比較的低い業界でもあり、大手企業が新たに参入してきて競合になる可能性もあります。
これらを踏まえると、通販EC業界全体としては好調なものの、中小企業側の視点で見ると、事業の先行き不透明感が強いと言えます。
これを考慮してM&Aを実施する機会が多いのが特徴です。
M&Aによる成長戦略とは
M&Aによるシナジー効果は、いろいろあります。しかし、会社として大事な利益の確保の方法は、二つしかありません。売り上げを伸ばす場合と経費を削減する、このいずれかです。
通販EC業界の場合、売り上げは広告と連動している部分もあります。広告費などの経費を減らすと売り上げは自然と落ちて、今後の戦略が取りにくいところがあります。しかし、M&Aは、売り上げと経費に関する部分をカバーできて事業の安定性が増します。販路や商品の拡大、そして仕入れコストの削減などにも寄与するでしょう。事業規模を生かした経費の削減は、広告や物流、仕入れなどのコスト効率にも貢献します。
M&Aは買い手も売り手も見方を変えるだけで、会社の成長に貢献する手法です。技術や人材不足などを補てんするために、求人などを通じて、人集めをしている企業は多いと思います。しかし、優秀な人材を採用するにも大きな投資が必要です。人材や技術を一気に確保できる手法の一つにM&Aがあります。
通販EC業界は、成長産業の一つですが、参入障壁が低く、競争が激しい業界でもあります。
こうした業界で勝ち残っていくためにも、M&Aを通じた成長戦略は欠かせないものであると思います。
(第2回につづく)