2024.01.16

【〈記者座談会〉2024年のEC市場予測】《② 物流》コスト増がサプライチェーンに波及

後藤:2024年において、物流関連のトピックスの注目度はとても高い。多くのトピックスの中から、物流費の高騰という観点から4つに分類する。

1つは、物流費の値上げに伴う影響、2つ目以降から倉庫側の現状、荷主側の対応、物流のロボティクスやソリューションの観点で進める。星野記者はどうか?

星野:配送会社の値上げは今後も続くと思う。ヤマト運輸や佐川急便が昨年4月ごろ、日本郵便は秋ごろに値上げを発表した。佐川急便に関しては、昨年の秋ごろに、今年4月の値上げも発表している。

こうした状況から、大口顧客の通販会社や3PLに対して、個別に値上げを打診していく流れも十分あり得る。

一方、物流費の高騰をどこで吸収していくのかにも注目する。通販・ECでは、商品価格の値上げが進んでいる。化粧品や健康食品、家電、家具など、さまざまな商品が今後値上げされると思う。物価の上昇にもつながるため、購買行動の冷え込みにもつながりそうだ。

後藤:酒井記者はどうか?

酒井:私は倉庫のロボティクスやWMSなどを取材している。私が担当するロボティクスのExotec Nihon(エグゾテック)はフランスの会社だ。日本や韓国のECが進んでいることも踏まえて、アジア市場での導入に注力している。あと、東大発のロボティクスベンチャーのレナトスロボティクスは、個人的に注目している。

後藤:ロボット(ロボ)導入で作業の効率化が進んだという声はあるか?

酒井:物流の2024年問題はトラックドライバーの負担を減らす対策となる。現状は、待機時間が長過ぎており、荷物を積み込むまでやることがない。この観点から、ロボが倉庫内の作業の効率化を進めてドライバーの負担を減らそうとアプローチし、2024年問題の解決につなげようとしている。


「2024年問題」の影響が表面化


後藤:分かりました。次は私から。星野記者や酒井記者が話したように、物流の2024年問題は時間の経過とともに、さまざまな分野への影響が表面化している。

2024年問題はBtoB輸送などへの影響が中心とされていたが、そんなことは全くないと、当初から思っていた。

本質は、トラックドライバーの労働環境の改善が根底にあるためだ。さらに、通販EC業界は、物流自体が競争領域であるため、配送会社だけの問題ではなく、必ず倉庫や荷主にも影響が出ることは必然だ。

私は3PLを担当している立場から、前述したことをまとめると、2024年問題の鍵を握るのは、倉庫側にあると思う。

まず、今、倉庫で何が起きているのか。集荷時間が従来よりも早まっている。ただ、取材していくと、従来と変わらない、さらには融通を利かせてもらっている倉庫もあることが分かった。状況的には、早まったという声と変わらないという声で二分化している。

集荷時間の件は、倉庫内の生産性向上も含めて意識しないといけない。大手の3PLを中心に、先ほど酒井記者が話したようにロボの導入が進んでいる。

星野記者が話していた商品価格の値上げの部分も同様に、商品値上げの前に、物流費の見直しとして、荷主から3PLへ倉庫管理費の交渉も進んでいる。なかには、倉庫管理費が高いから、荷主が他の3PLへ切り替える動きもある。

こうした中、3PLの動きも活発だ。カート側の企業との直接提携が目立ってきた。さらに、3PLが持つ運賃表(タリフ)の調整も進む。タリフは3PLと配送会社による契約のため、3PLごとで違う。もちろん、物量が多いほどタリフは異なる。大半は現状維持だが、なかには、タリフがさらに安くなっている3PLもある。

安いタリフを持つ3PLは、荷主集めもできている。今だからこそ、あえてタリフを公開する3PLも増えている印象で、配送単価が安いことは1つの大きなポイントだ。



<記者が考える2024年のキーワード>


▲星野耕介記者

「EMV3―DS」

ECサイトでカード決済を行う際の本人認証「EMV3―DS」を、2025年3月までに導入することが義務化された。


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