2023.11.16

【年間2000件超の情報提供】経産省にデジタルプラットフォーム取引相談窓口(オンラインモール利用事業者向け)の利用メリットを聞いた

経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 デジタル取引環境整備室 室長 仙田正文氏(左)、法令専門官・弁護士 皆川征輝氏(右)


相談で「悩み解消」「モールの公正化」につながる


――「透明化法」施行からの取り組みについて、経産省としてはどう評価していますか?

皆川:令和4年度(2022年度)は、3分野の取引相談窓口に計3669件の情報提供がありました。透明化法を最大限生かすためには、利用事業者の声が大事です。自分の悩みは「取引相談窓口に話を持ち込んでいい話のか」「経産省に話していいのか」など不安になられる方もいるかもしれません。しかし、自社の悩みや不安の解決につながる可能性もありますし、相談の情報がデジタルプラットフォームの透明化・公正化や市場の発展につながる可能性もあります。ぜひ、相談していただきたいと思います。

2022年度、特定デジタルプラットフォーム提供者による報告書や相談内容を基に、初めての「モニタリング・レビュー」を実施し、その中では、デジタルプラットフォームの改善に向けた取り組みが確認できました。もっとも、透明化法違反が認められて、経産省から4件の口頭指導を行った事例もあり、まだ表に出ていないものも含めて改善の余地が少なからずあると思います 。

仙田:透明化法の効果として、デジタルプラットフォームの取引条件やデジタルプラットフォーム提供者の運営改善に向けた取組について「見える化」がなされた、との声もいただいています。

取引相談窓口に寄せられた利用事業者の声は、個別の相談内容や相談者の情報は分からない形で集約され、「モニタリング会合」に報告しています。利用事業者が日々の取引で感じていることが、自分たちだけが感じていたわけではないと思ってもらえるかもしれません。この「モニタリング会合」はオープンな形で実施しており、デジタルプラットフォームが提出する報告書も公表されています。自分たちの声が、会合の議論で活かされているところも見ていただけると思います。

――取引相談窓口からの情報がデジタルプラットフォームの透明化や公正化、市場の発展にもつながるのですね。

仙田:デジタルプラットフォームが発展したことで、中小企業やスタートアップが市場にアクセスしやすくなったり、デジタルプラットフォームはグローバルに展開していることも多く、利用事業者が海外展開もしやすくなったりと、良い側面も大きいと考えています。

その一方で、デジタルプラットフォームは、多数の取引をシステムで集合的に取扱うことで、スケールメリットを発揮するビジネスモデルです。多数の事業者が利用することでデジタルプラットフォームの魅力は高まり、魅力が高まると、さらに利用したい事業者が増えるという仕組みとなっています。こうした性質上、独占化・寡占化しやすいビジネスとなります。

多数の取引をまとめて取扱うということになりますと、取引条件なども規約化され、一律に適用されることになります。BtoBの取引では、本来、条件を設定・変更する際に両者間で協議がなされるべきですが、デジタルプラットフォームの取引においては、こうした理由から、構造的に利用事業者の声が反映されにくい状況もあります。一例を挙げれば、利用規約を変更する際は、デジタルプラットフォーム側の準備が必要なのと同様に、利用事業者側も規約に対応するための準備が必要です。しかし、その準備に必要な時間が十分に確保されないケースや変更の理由がわかりやすく示されないケースもあります。

そういう状況を改善するため、透明化法が施行されました。利用事業者の声が多く集まることで、「モニタリング会合」における議論をより充実させることができます。


▲経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 デジタル取引環境整備室 室長 仙田正文氏


モールの取組も前進、継続的に注視


――海外でもデジタルプラットフォームに関するルール作りは進んでいるのですか?

仙田:例えば、EUでは、デジタル市場法が制定されており、プラットフォームサービスの運営事業者に対して一定の行為類型の禁止や義務付けが求められています。

また、ルール作りそのものではありませんが、海外では、競争当局が独占禁止法違反の訴訟を提起することを通じて、個別案件として是正を求めることも数多く行われています。

日本の透明化法は、イノベーションの促進と規律のバランスを取ることが重要との考えから、共同規制やアジャイル・ガバナンスといったアプローチを採用しています。政府が大きな方向性を示しつつ、プラットフォーム提供者の自主的な取組にある程度委ねながら運営改善を求めています。

――2022年度の大臣評価の後、デジタルプラットフォームに変化は見られますか?

皆川:経産大臣の評価の公表が2022年12月で、2023年度の定期報告書は2023年5月末に提出されましたので、大臣評価から半年程度でした。短い時間ではありましたが、各社改善に向けてさまざまな検討を進めているといった報告も見られました。例えば、重要な規約等をまとめたページを作成しているといった報告もありました。

しかし、報告書に「こう取り組んでいます」と書いてあっても、実際には徹底しきれていなかったり、改善しきれていなかったりすることもあると思います。その状況については、実際にデジタルプラットフォームを利用している事業者の皆様から話を聞かないと分かりません。

相談だけではなく、アドバイス後の状況やデジタルプラットフォーム側の反応、報告書を踏まえての状況などについても取引相談窓口に教えていただけるとありがたいと思います。

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