2023.10.20

【データに見る「ECの地殻変動」】<第20回>インバウンド消費は越境EC市場にプラスか

経済産業省が発表した2022年における日本からの越境EC市場規模は、中国消費者向けが2兆2569億円、米国消費者向けが1兆3056億円だった。2022年の両国の数値を合算すると3兆5000億円を超える、まさに巨大な市場を形成している。

もちろん東南アジアや欧州など中国、米国以外の消費者も購入しているので全世界規模では4兆円は下らないのではと推定する。2023年は処理水問題で中国消費者向けがやや厳しそうだが、長期トレンドとしてはもう少し右肩上がりが続くと思う。




インバウンドが波及!?


ところでコロナ禍の水際対策が緩和してから、訪日外国人数が増加しているのは既知の通りだろう。インバウンド消費を当て込んでいる事業者の鼻息は荒そうだ。

そして訪日外国人数の増加がもたらす越境ECへの波及効果を期待するEC事業者も多いと思う。訪日時に購入してもらった商品を越境ECでのリピート購入につなげたいのがEC事業者の描くシナリオだろう。そこで実際にインバウンド消費はどれくらい越境EC市場を押し上げる効果があるのか考えてみたい。

インバウンドを起点とした消費者の越境EC購入は次のステップになるだろう。①買ってみて気に入った ②再度購入したい気持ちになる ③自国では手に入らないことが判明 ④越境ECで手に入ることに気付く ⑤値段が見合うので購入に本腰 ⑥日数も待てそうなので購入ボタンを押す――といった流れか。

細かい点を含めればもっとステップが細分化しそうだが、いずれにせよ帰国後に消費者が越境ECで商品を購入するまでには、いくつかの関門があることが分かる。

訪日外国人数がピークとなった2019年のインバウンド消費における買物の総額は1兆6690億円だった。ここから①~⑥のステップを経て越境ECに辿り着ける分がどれくらいあるだろうか。

1兆6690億円には、ペットボトル飲料やちょっとした買物等が全て含まれている。そもそも越境ECでも売っている商品はかなり限定されるだろう。また売っているとしても消費者がその存在に気付くかどうかも重要だ。要するに越境ECでのリピート購入は限定的と思う。

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