ジェイアール東日本物流は、サプライチェーンの最適化を支援するCoupa(クーパ)のシミュレーション技術を活用し、コストを最小化した物流網の再構築を進めている。2027年末には、多様な温度帯に対応できる倉庫を新設する。Coupaの技術を活用し、クライアント向けの物流提案も強化している。グループ外の荷主の獲得を促進し、事業成長につなげたい考えだ。
同社は主に駅構内にある店舗向けにトラックや鉄道を使った配送(はこビュン)を手がける。2022年度の営業収入は127億円で、グループ内の荷主による収入が約7割を占めている。
「約6万社あるといわれる物流業界内で、当社は400ら500番目の立ち位置。さらなる成長のためには、グループ外の荷主を増やすことが必須だ」(常務取締役営業本部長 石戸谷隆敬氏)と話す。
▲常務取締役営業本部長 石戸谷隆敬氏そのために既存の倉庫や拠点などのネットワークの最適化、コスト削減、付加価値の創出を目指す考えだ。
増収に向け「はこビュン」の拡大も目指す方針だ。「駅から駅だけではなく、その先の店舗などまで範囲を広げたい。現在は早朝や深夜の便で配送するニーズが高い。例えば昼間はホテル向けの手荷物を運ぶなど、多種多様な荷物を取り扱っていきたい」(石戸谷氏)と話す。
Coupaで最適化
Coupaのソリューションを活用することで、「拠点の場所」「積載率」「在庫の保有量」などを考慮した最適なサプライチェーンをシミュレーションできるという。複数のシナリオに沿ってシミュレーションすることで、輸送距離の削減や時間の把握ができる。
ジェイアール東日本物流は、輸送ダイヤを改正した2022年10月以降の物流体制をベースに、自社の物流拠点の再構築にも取り組んでいる。「常温と冷蔵品を混載する」「拠点の選択肢を増やす」などの複数のシナリオをCoupaで試している。
シミュレーションの結果、トータルコストが最小となった「在庫、仕分け倉庫を1拠点に統合し、通過型倉庫を3拠点配置する」というパターンで整備計画を策定した。計画に基づき、多様な温度帯に対応する「SCM統合拠点」を2027年末に整備する予定だ。
事業拡大における課題意識について、「今の拠点の配置は、既存のものを継承しているだけだった。コロナ禍で改めて効率的な配送について考慮したところ、より最適な配置があるのではないかと思っていた」(取締役営業本部企画ユニットゼネラルマネージャー 中島大一郎氏)と話す。
▲取締役営業本部企画ユニットゼネラルマネージャー 中島大一郎氏Coupa導入の理由について「これまでは配送ルートは手作業でシミュレーションしており、属人化していた。Coupaでは駅や拠点ごとのパターンの多さに簡単に対応できる」(中島氏)と話す。
「はこビュン」の強み生かす
「2024年問題」の対応については、「すでに当社のトラックドライバーは不足気味だ。拠点の統合や再配置で物流ネットワークを最適化し、効率化を図る」(石戸谷氏)と話す。
拠点の整理をした今後について、「駅に運ぶ需要や「はこビュン」の強みも生かしたい。コールドチェーンの強化など付加価値を高められる。サプライチェーンの面では、グループ外の小売やメーカーといった荷主に、最適な在庫や出店計画への対応も含めた提案をしたい」(中島氏)と意気込みを語る。