2022.04.14

【サプリ・化粧品EC】「初回不正購入」の被害が急増中 TikTokの情報商材屋が指南か


サプリメント・化粧品のECで、2022年に入ってから、定期購入の初回割引商品の不正購入・転売による被害が続出している。複数のEC事業者や不正検知サービスの提供事業者への取材で、このほど分かった。これまで月に1件程度だったチャージバックの被害が、毎日報告されるようになったというEC事業者もあった。1日に10~20件の、住所・電話番号がでたらめな注文が寄せられているケースもあるようだ。不正購入が増加している背景には、動画プラットフォーム「TikTok」でサプリの転売を指南する、悪質な情報商材事業者の急増があるとみられる。


割安な初回を転売


サプリや化粧品の定期通販では、初回商品を「50%オフ」など、割安な価格で販売するケースが少なくない。定期購入に契約して割安な初回商品のみを購入し、商品が届くと、定期購入を解約。商品をアマゾンやフリマサイトなどで転売する「不正購入」の被害が相次いでいるようだ。
 
不正購入の被害は、増加し始めた時期にばらつきはあるようだが、2021年後半から2022年にかけて増えたという声が多い。
 
中堅化粧品EC企業A社では「3月中旬から、毎日のように不正購入があったという報告が上がってきている」(役員)と話す。
 
中堅化粧品EC企業B社では「2月後半から、複数のブランドで同じ不正があった。後払い注文で、送り先が東京都港区、電話番号も住所もでたらめという注文が、1日に10~20件はあった」(役員)と話す。同社では、後払い決済やプリペイドカード決済、デビットカード決済など、さまざまな決済手段を使った不正購入が起きているという。
 
後払い購入で初回を受け取り後、マイページで住所や電話番号を変更し、2回目以降の荷物が届かないようにされたケースもあったという。
 
中堅サプリEC企業や大手食品メーカーのサプリ通販などからも、「2021年以降、初回商品の不正購入による被害が急増した」「不正購入が急増しているので、不正検知システムを導入する予定だ」などといった声が聞かれた。


転売推奨動画は100件以上


本紙では2020年9月17日号で「サプリの転売を指南するアフィリエイター」の存在が被害の拡大につながっていることを報じていた。
 
現在では、さらに手口が巧妙化していることが分かった。情報商材の販売事業者が、初回商品の転売の方法を、「副業の情報」として、ユーチューブや「TikTok」で販売しているケースが多いようだ。「TikTok」上で「副業」と検索すると、「誰でも簡単に10万円稼げるサンプル品転売」といった動画が100件以上もヒットする。



不正検知システムを提供しているスクデットの細江啓太社長は、「在宅ワークが浸透し、企業が副業を認めるケースが増えたことから、副収入を得る方法として、『転売』に取り組み始める人が増えているようだ」と話す。
 
通販ecリスクマネジメント研究所の東弘樹代表取締役は「情報商材屋は、あたかも正規の広告代理店のようなふりをしているため、見分けがつかない。新たな転売者を開拓するリクルートの際に『転売』という手口を言わないケースもある」と話す。
 
「転売」については明らかな迷惑行為だが、法律上の罰則があるわけではない。明らかな不正購入に対しては、商品を発送しないという方法をとるしか、被害を防ぐ方法はなさそうだ。
 
スクデットの細江社長は、「対策の手段の一つとして不正検知のシステムを入れる方法がある。住所や電話番号、メールアドレスだけでなく、地域やIPアドレスといった情報で、不正を検知するサービスもある」と話す。



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