2024.01.17

【〈記者座談会〉2024年のEC市場予測】《③ 法規制》ステマ規制対応に追われるEC事業者


取引データの保存が税申告に影響


星野:2024年1月に、改正電子帳簿保存法が本格運用されると話題になっている。EC事業者には関係ありそうか?

上山:あるバックオフィスツールの企業に取材すると、BtoB‐EC事業者が対応する際に苦戦する可能性があるようだ。インボイスに対応済みだったとしても、電子帳簿保存法の要件を満たして対応していないというケースは、意外と多そうだ。

星野:例えば、EC企業がフリーランスの人材に業務を委託している場合、電子帳簿保存法に対応しなければいけないのか?

上山:そのケースはもちろん、通販会社の側でも対応が必須になる。オンライン上で受け取った請求書を、法律の要件を満たす形の電子データとして保存する必要がある。対応が漏れると、青色申告の取り消しなど、税申告で不利になりうる。さらに、改ざん・申告漏れと認定された場合、重加算税の罰則を受ける恐れもあると聞いた。

小規模事業者の場合特に、電子帳簿保存法への対応で、事務の手間が大幅に増えると思う。例えば、商品の仕入れ時に、膨大な量の書類をPDF化する際など、業務管理ソフトを使用せずに手作業で保存するのは、人的コストが増すだろう。人手が限られる中小事業者の方が、負担が増える可能性が高いだろう。

人的コストや、確実に要件を満たして保存することを踏まえれば、インボイス・電子帳簿保存法に対応する業務管理ソフトを導入することが、結果的には最善手だと思う。


2025年3月までにEMV3‐DS導入義務化


星野:最後に「EMV3‐DSの導入義務化」については話したい。EMV3‐DSとは、消費者がECサイトでクレジットカード決済を行う際、本人確認を行うセキュリティー認証のことだ。

EC市場では、クレジットカード決済の比率がかなり高い。ただ、クレジットカードの不正利用被害が、毎年かなりの勢いで増えている。現在、年間400億円以上のクレジットカードの被害が発生していると言われている。

そこで、怪しいユーザーがECサイトで決済しようとしたら、ワンタイムパスワードを表示させるのがEMV3‐DSという機能だ。表示した写真の中から特定の写真を選ばせるものや、本人の電話番号にショートメッセージを送って認証させるものだ。

このEMV3‐DSを、原則全てのECサイトに導入するという規制を、経済産業省は2023年2月に発表した。2025年の3月までにすべてのECサイトの導入を目指すという。この導入の義務化については、決済代行会社が管理するということになっている。

永井:EC事業者の導入は進んでいるのか?

星野:このEMV3‐DSの導入が全く進んでいないという情報がある。ワンタイムパスワードを表示すると、カゴ落ちの可能性がかなり高まるため、EC事業者が導入に二の足を踏んでいるという状況があるようだ。

ECサイトで商品を買おうとしたのに、決済画面に進んだら、謎のパスワードが表示され、離脱してしまったという消費者が多いからだろう。EC事業者としては、売り上げを減らしたくないから、そういったかご落ちが発生するシステムは、できれば導入したくないはずだ。

導入の義務化は、2025年のため、喫緊の課題というわけではないが、ゆくゆくは対応が求められることになるだろう。



<記者が考える2024年のキーワード>


▲上山絋基記者

「自社ECの越境化」

自社ECで外国語・外貨決済などに対応し、海外需要を捉えられるかが鍵になると予想する。




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