2023.08.25

【「ふるさと納税」特集】寄付額上位に聞く成功の秘訣!自治体アンケートでは8割が「5割ルール厳しい」


【寄付額21年度1位、22年度2位の秘訣は?】
北海道紋別市 ふるさと納税係 斉藤聖人係長「寄付額上位ランクインで地元に活気」



北海道紋別市は、2021年度のふるさと納税の寄付額が全国で1位になった。2022年度も2位にランクイン。寄付額がトップクラスの自治体だ。紋別市では現在、地域の事業者30社以上が、返礼品を提供している。返礼品事業者だけでなく、梱包事業者や運送事業者も含め、活気があふれているという。ユニークな返礼品を提供する地元の飲食店が、テレビで紹介されたことをきっかけに、それを目当てに紋別市を訪れる観光客もいるほどだという。紋別市の総務部企画調整課の斉藤聖人係長に、ふるさと納税への取り組みについて聞いた。



▲紋別市 総務部 企画調整課 斉藤聖人係長


海産物が人気の返礼品


――紋別市のふるさと納税の人気の返礼品について、教えてください。

人気の返礼品は、オホーツク産のホタテやカニなどの海産物です。地元の加工会社や水産加工組合など、30社以上の事業者が、返礼品を提供してくれています。地元に、よつ葉乳業の工場があるので、バターも人気の返礼品となっています。


▲オホーツク産のホタテが返礼品として人気

全国からたくさんの人に寄付をしてもらっているので、地元の事業者がふるさと納税のおかげで活性化しています。「自分のところの商品を返礼品として扱ってほしい」という、地元の事業者も増えています。

地元の飲食店「焼肉酒庵 仲川」さんでは、「紋別名物 流氷昆布締め牛タン」という返礼品を出品したところ、全国放送のテレビ番組でも紹介されました。昆布のうまみと肉のうまみがマッチした味は、他で食べたことがなく、とてもおいしいです。「仲川」さんでは、自社で通販も始めたそうです。


▲「紋別名物 流氷昆布締め牛タン」

返礼品事業者だけでなく、ふるさと納税に関する梱包や運送なども含め、地元の事業者が活気づいています。


観光資源に投資


――寄付金はどのように活用していますか?

当市独自の使い道として、アザラシなどのオホーツクの海洋保護に活用しています。紋別市には、国内唯一のアザラシの保護施設があり、施設の改修・改善費用などに充てています。


▲寄付金をアザラシなどのオホーツクの海洋保護に活用

紋別市は、オホーツク海の流氷が大きな観光資源です。流氷観光船「ガリンコ号」が有名です。こうした観光スポットの整備にも、ふるさと納税の寄付金を活用しています。


▲流氷観光船「ガリンコ号」

紋別市では、他の多くの地方自治体と同様、若い人材が流出しているという実態があります。市内に大学がなくなったことなどから、進学のために町を出る若者が増え、自然と人口が減少傾向となっています。

「おためし暮らし」の推進や空き家対策などにも寄付金を充当し、市外からの移住・定住の拡大に注力しています。


市の職員が自分で見る


――ふるさと納税の寄付金を増やすために、どういった取り組みをしてきましたか?

市が独自で、大手のポータルサイトを研究し、それぞれのユーザーの傾向に合わせた運用を行っています。

例えば、紋別市では「楽天」と「さとふる」経由の寄付の申し込みが多いですが、「楽天」は、大型のセールイベントの時期に申し込みが多くなる傾向があります。ユーザーの買い回りを意識した戦略を立てています。

ふるさと納税は、11月から12月にかけて寄付の駆け込みがあります。ただ、年末には掲載できない旬の返礼品などもあり、返礼品の魅力が完全に伝わらないという課題もあります。

「さとふる」は、通年で安定して寄付の申し込みがありますから、年末以外の旬の返礼品の魅力をうまく伝えられています。その結果、リピート率も高まり、「さとふる」のランキングの常連になり、さらに寄付が増える結果につながっています。

ふるさと納税はECと似ていますが、「地元の魅力を伝える」という点が大きな違いです。返礼品や地元の魅力を伝えつつ、寄付の使い道などもしっかり表現していっているため、大きな寄付を獲得できているのだと思います。

市の職員が、地域の事業者を訪問し、返礼品を自分の目で見ることも重要だと思います。書類の上では「扱えない」と判断した返礼品も、事業者に会ってみると、思いがけない品だと分かり、発掘・発見できることもあります。

「地元のためのふるさと納税」ということを考えるのが重要だと思います。

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