2023.07.03

【インタビュー】実正、鈴木聡研究部部長「超臨界抽出で差別化・高付加価値化に貢献」


化粧品OEMの実正は近年、超臨界抽出技術を活用した製品群の提案を強化している。超臨界抽出では、他の抽出方法では得られない有効成分を抽出することが可能。100種類以上の原料から超臨界抽出を行うスクリーニングを行っており、美白素材や抗シワ素材の開発に成功している。オーダーメード原料の開発も可能だという。同社の中で、超臨界抽出を担当している、研究部の鈴木聡部長に話を聞いた。

――超臨界抽出について教えてください。

どんな物質も、温度と圧力を一定以上に上げると、固体・液体・気体のいずれでもない「超臨界流体」になります。中でも二酸化炭素は超臨界流体にしやすいことが知られています。この、二酸化炭素の超臨界流体を使ったエキスの抽出法が超臨界抽出です。

この技術を用いれば、天然素材から独自性の高い成分を抽出し、化粧品に配合することが可能です。熱水抽出やエタノール抽出では得られない有効成分を抽出することも可能です。差別化された化粧品の開発に貢献できます。

当社の工場には、超臨界抽出装置を設置しており、超臨界抽出技術を用いた原料抽出を行えます。

――超臨界抽出によって製造した原料の具体例を教えてください。

すでに開発できた原料がいろいろとあります=一覧表参照=。例えば、久慈産琥珀から超臨界抽出で製造した素材が「超臨界抽出久慈琥珀エキス」です。このエキスには、既存のエタノール抽出品には確認されていない、強いメラニン低減作用(美白作用)とコラーゲン産生促進作用が確認されています。現在、後者の特許を出願中です。



また、コメヌカから超臨界抽出した「コメヌカ超臨界CO2エキス」にもあります。超臨界抽出のエキスには、外原規のコメヌカエキスを大きく上回る美白作用があることが試験で確認されています。

「エゴマ種子超臨界CO2エキス」には、極めて強力な美白効果があることが明らかになっています。試験では、メラニンの産生量が90%以上減少していることが確認された。通常のエゴマ油よりも強い効能を持つことが確認されています。

このように、超臨界抽出で得たエキスには、他の抽出法で得られたエキスにはない優れた機能性が確認されるケースが少なくありません。超臨界抽出のエキスには、他の抽出法では得られない効能があるケースも少なくありません。

超臨界抽出のエキスの効能に関しては、学会発表や論文発表も積極的に行っています。

――超臨界抽出は、他のOEM会社も行えますか。

超臨界抽出を自社施設内で行える化粧品OEM会社はまだ少ないと思います。普通に入手できる植物エキスについては、すでに効能が研究されつくされています。入手できる原料から、これまでと違う抽出方法で成分抽出を行おうということで、超臨界抽出にたどり着きました。

――効能を持つエキスはどのように開発するのですか。だいたいこういう効能を持つだろうという推定は、抽出前からできるものなのでしょうか。

事前に効能を推定するのは、なかなか難しいですね。手探りで一つずつ、原料を調べていっているのが現状です。抽出しては効能を調べる、という繰り返しです。

おそらく今までに数百種類の植物原料について、超臨界抽出エキスの効能を調べたと思います。効果があったものは、安全性や毒性も調べています。

――超臨界抽出に適した原料はどのようなものですか。

基本的には、油溶性の成分を抽出する技術であるため、油溶性の成分が含まれていないものについては適していないと思います。理論的には、植物でも動物でも鉱物でも、超臨界抽出を行うことは可能です。収量は原材料によってまちまちですから、採算ベースに合うかどうかという部分はあると思います。当社でも、どのような条件にすると収量が高まるのかといった研究は、原料ごとに日々進めています。

――顧客企業の〝留め型〟原料として、超臨界抽出のエキスを開発することも可能ですか。

それも可能ですし、実際に供給しているケースもあります。持ち込んでいただいた原材料から超臨界抽出を行い、得られたエキスの有効性・安全性を調べるといったことも可能です。化粧品の圧倒的な差別化につなげていただけると思います。地元の天然素材から抽出し、〝地産地消〟の化粧品を製造することも可能です。

ただ、超臨界抽出のエキスを原料供給するといったことは、当社ではやっていません。あくまで当社がOEMをお受けする案件に限定して抽出を行っています。

――1回の抽出にどの程度の費用がかかりますか。

抽出自体にかかる費用は10万円程度だと思います。

――今後の研究の方向性について教えてください。

これまでの研究では、美白・抗シワの効能を持つエキスの開発に成功しています。できれば、美白・抗シワ以外の効能を持つエキスも開発していければと思っています。

超臨界抽出は、特別な溶媒を使用しない抽出技術であるため、自然派化粧品などとの相性も良いでしょう。自然派・SDGsだけでなく、高い機能性、オリジナリティーを訴求できる化粧品の開発に貢献できる技術だといえます。ぜひ、化粧品の差別化・高付加価値化に役立てていただければと思います。


・実正
https://www.misho.co.jp/







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