2023.07.03

【現場探訪】東洋新薬の「クイックラボ渋谷」、「売れる」につながるデータ取得も


健康食品・化粧品の総合受託メーカーである東洋新薬が、渋谷に開設している、化粧品・健康食品の商品開発専用の大型研究施設「クイックラボ渋谷(QLS)」が注目を集めている。同施設には、肌画像診断装置「VISIA(ビジア)」やデジタルマイクロスコープを含め、多様な検査・評価設備を常設している。QLSを利用すれば顧客企業は、機能性や使用感をその場で確認しながら、化粧品・健康食品を開発・試作することが可能。テレビ通販やウェブ、会報誌などでのマーケティングに貢献する、「売れる」につながるデータも取得可能だ。本紙記者がQLSを訪れ、QLSの実態に迫った。


文化・情報の発信地に、大型研究施設出現


東京・渋谷に2022年2月に現れた、大型研究施設がQLS。同施設の利用予約が殺到するなど、顧客企業からも好評だという。

QLSを訪れてまず驚かされるのが、その立地の良さだ。「渋谷のど真ん中」という立地が、首都圏の顧客企業の「訪れやすさ」を大きく高めている。従業員の「働きやすさ」にもつながっているようだった。

化粧品・健康食品などの美容・健康商材は、トレンドに合った商品開発が求められる分野といえるだろう。文化・情報の発信地である「渋谷」に商品・処方開発拠点があることの意味は大きそうだ。

恵まれた立地でありながら、ラボ面積は287平方メートル。テニスコート1.5面分の広さを備えている。QLSは、佐賀県にある本部と同等の開発能力を備えており、化粧品・健康食品の試作・開発から評価・エビデンス取得までを一貫して行える。


シミ・シワ・キメの定量的評価も可能


今回は特に、QLSに常設されている、化粧品の検査・評価設備にクローズアップしてみた。

QLSでまず目についたのは肌画像診断装置「VISIA」だ。同装置を使用すれば、撮影した肌画像から、肌状態の解析が可能。シミ、シワ、キメ、毛穴、ニキビなどを数値化し、定量的に分析できる。ニキビなどの原因となるポルフィリンや赤ら顔に関する肌画像解析なども行える。

VISIAには、世界中の人々の数十年にわたる肌解析データが蓄積されている。これらのデータを基に、肌年齢の測定を行うことも可能だ。

高性能のデジタルマイクロスコープを備えているのもQLSの特徴。肌などの状態を鮮明な拡大画像で確認することができる。例えば、毛髪に使用すれば、キューティクルの状態を調べることもできる。


▲肌画像診断装置「VISIA」


マイクロスコープは容器開発にも貢献


東洋新薬では、デジタルマイクロスコープを、化粧品容器の開発にも役立てている。

同社には、化粧品容器やパッケージの開発を手掛ける設計担当のスタッフが全体で約20人在籍している。独自性・機能性・デザイン性・エコなどの観点から、優れた容器・パッケージの開発を行っているという。化粧品の受託製造会社が、容器の本格的な設計まで行えるケースというのは珍しい。

化粧品容器においては、細かな歪みや、ふたと容器の微妙な篏合(かんごう)の狂いが、大きなトラブルに発展するケースもある。同社ではデジタルマイクロスコープなどを活用して、化粧品容器のチェックを行っているのだという。

表皮角層水分量測定装置「SKICON(スキコン)」も導入している。化粧品の保湿性が経時的にどのように変化するかといったことも、「SKICON」の結果を見れば一目瞭然だ。

経皮水分蒸散量(TEWL)を測定できる「テヴァメーター」も設置している。バリア機能や肌荒れの状態を把握できる。

光沢度を測ることができる「グロッシーメーター」や、肌弾力の計測機器、皮脂を測定できる「セブメーター」なども備えている。

簡易型SPFアナライザーも設置しているため、インビトロSPFなど、化粧品のUV性能を調べることも可能。一般的に、SPF値を高めるほど、感触が悪くなりがちだが、何度も試作を繰り返しながら、SPF値と感触のバランスを確認することもできるという。


▲デジタルマイクロスコープ


QLSでの研究をマーケにも活用可能


QLSに設置されたさまざまな計測・検査機器を使って、化粧品の塗布前後の肌画像を解析し、化粧品の効果を数値的に把握することなども可能だ。効果の確かな化粧品の開発につながる。「取得したデータを医師などの専門家に確認しながら、化粧品を開発するメーカーもある」(同社)そうだ。

取得したデータは、薬機法の範囲内ではあるが、マーケティングにも応用が可能。顧客企業が、テレビショッピングやユーチューブの動画で、QLSでの商品開発の風景を見せたり、そこで得られたデータを提示したりすることもあるという。通販会社が会員向けの会報誌で、QLSでの研究開発の取り組みを紹介するケースもあるとしている。

インフルエンサーによる情報拡散との相性も良いという。まさに、「売れる」につながるデータが取得できる研究拠点といえそうだ。

現在のところ、顧客企業に対しては、宣伝材料になる素材を無償で提供しているという。

「充実した設備」と、「高度な開発能力を備えたスタッフ」、そして「マーケティングへの高い貢献性」を兼ね備えたQLSに、今のところ、死角といえるものは見つからなかった。

案内をしてくれた同社の商品開発専門スタッフは、「当社は、丁寧できめ細かな対応力にも強みがあると自負している。ODM製品のデザインを含め、お客さまのご要望に、丁寧に真摯に応えさせていただいている」と話していた。


●受託製造・商品開発に関する相談・問い合わせ先
https://www.toyoshinyaku.co.jp/contact/odm/

●クイックラボ渋谷(QLS)紹介ページ
https://www.toyoshinyaku.co.jp/synthesis_entrust/quicklabo/







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