2023.06.16

【<特集>メタバースコマース最前線】数百社がメタバースコマースサイト構築中!レア体験でブランド価値向上

メタバースコマースのブームが始まろうとしている。2023年以降、仮想空間とECを組み合わせたサービスの開始の発表が相次いでいる。三越伊勢丹や阪急阪神などの百貨店が中心だ。メタバースサイトの構築支援を手掛ける複数社に取材したところ、それぞれ、10~50社のメタバースコマースサイトを構築中だという。2023年後半から続々と、大手から中小までさまざまなメタバースコマースサービスがスタートしていくとみられる。一方、米アップルは6月、ゴーグル型の新デバイスを24年に発売することを発表した。今後も、一般消費者がメタバースを手軽に利用できる、端末や環境の整備が進むと見られる。







<CONTENTS>
▶【分析】メタバースコマース最前線!「モール型」と「自社EC型」に分類
▶【自社EC型】カンジュクファーム、畑から山梨の魅力を発信 ビジネスチャンスのきっかけも
▶【ソリューション】ハコスコ、地方店舗の導入拡大へ ライブコマースの実証実験も
▶【ソリューション】エッジニア、360°VRクラウドツール「KuZuKiRi360」を提供 運用コストは少額のサブスクで
▶【モール型】ANA NEO、メタバースで「旅を拡張」 モールで買い物体験も
▶【自社EC型】天藤製薬、痔の適切な理解を高める メタバースでブランド訴求



構築中のメタバース多数


現在、メタバースやVR(仮想現実)を介したECサイトの構築が、多くの企業で着々と進められているようだ。

2021年末ごろからバズワードとなった「メタバース」。2022年には、関連サービスの提供事業者が多くのビジネス展示会などに出展した。メタバースコマースに興味のあるメーカーや小売店などが、構築支援事業者に、構築を委託しているようだ。

メタバースコマースサイトの構築を手掛ける大日本印刷では、2022年中に、大手メーカーや小売企業など100社以上から、メタバースコマースサイトの構築についての、問い合わせを受けたという。

メタバースコマースサイトの構築を行うurthでは現在、大手から中小まで、数十社の仮想空間のコマースサイトの構築を行っているという。VRコマース店舗の構築を手掛けるエッジニアも同様に、数十社のサイト構築を手掛けているそうだ。


「モール型」と「自社EC型」に分かれる


メタバースコマースサイトは、「モール型」と「自社EC型」の2つに大別できる。

「モール型」は、プラットフォーマーが巨大なメタバース空間を構築し、メタバース空間の中に、さまざまなカテゴリーのショップが、テナントとして入居するイメージだ。「楽天市場」や「アマゾン」などと近しいモデルといえる。

モール型のメタバースコマースサイト「メタパ」を運営する凸版印刷は5月、「メタパ」をウェブブラウザから利用できるようにした。これまでは、スマホの専用アプリをダウンロードして利用する形式だった。ブラウザから利用できるようになり、利用者のハードルが大きく下がったとしている。


▲「メタパ」のメタバースワールドにはテレビア朝日など15店舗が出店している

「メタパ」には現在、テレビ朝日や朝日生命、ソフトバンク、KOKUYOなど15店舗が出店している。常時利用が可能となっている。

「メタパ」内では、ユーザー同士で、音声による会話やテキストチャットを行うことが可能。「プライベートモード」を使えば、周りのユーザーに聞かれずに、スタッフと会話することもできるという。

「メタパ」上では、エクセルや写真データ、AR画像などの資料も、ユーザーと共有できる。商品の料金比較などによる提案も行えるとしている。


▲「メタパ」内で商品の閲覧が可能。購入する場合はECサイトへ遷移する

「メタパ」の出店企業は、リアルでは開催が難しい、異業種とのコラボを、メタバース空間内で行うことも少なくないという。ユーチューバーを使ったライブイベントなどに、メタバース空間を利用するケースも多いとしている。


▲異業種同士のコラボレーションの場にも

一方、自社ドメインでメタバースコマースサイトを構築する「自社EC型」も多い。百貨店のほか、中小のアパレルや化粧品ブランド、飲食店なども、独自のメタバースコマースサイトを構築している。

各社は、商品の一部をメタバースサイト上に表示。商品の詳細情報や商品の画像をサイト上で閲覧できるようにしている。

多くの企業は、メタバースを使うことにより、ユーザーとブランドの接点を増やし、ロイヤルティーを高めたいと考えているようだ。ただ、メタバースコマースサイト上で、商品が多く売れたといった事例はまだ聞こえてきていない。

メタバースコマースサイト上での商品の注文処理や決済については、ECサイトへのリンクを埋め込み、通常のECサイトで行ってもらうケースが主流のようだ。
 

地域の仮想通貨との連携も


メタバースサイトと、地域の仮想通貨を連携させて物販を行う事例もある。茨城県つくば市で熱供給インフラの運営を行うミライデザインパワーは3月、中部電力ミライズ、三井住友海上火災保険、urthの3社と連携して、つくば市の地下空間と熱供給設備を再現した「ミライデザインメタバース」の提供を開始した。


▲つくば市の地下空間を再現した「ミライデザインメタバース」


▲実際のつくば市の地下空間(熱供給インフラを運営するミライデザインパワーの施設)

ミライデザインパワーが提供している地域通貨「クラフトコイン」と連携しており、クラフトコインのユーザーが、メタバース上で、同通貨を使って商品を購入できるよう環境の整備を進めている。

例えば、地域のお米やソーセージなどを販売する事業者が、クラフトコインのユーザーのパソコンの画面上に、専用のQRコードを表示すると、ユーザーはQRコードから、「クラフトコイン」のアプリ画面に遷移し、その場で決済が行える。商品は、後日宅配で送られるという。


▲地下空間を模したメタバース内ではCAFEスペースも設置。カフェ内で実際の物販を行う予定

ミライデザインパワーでは、メタバース空間の認知を広げるとともに、クラフトコインの加盟店とユーザーも増やし、メタバース空間上での流通を増やしていきたいという。

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