2023.05.22

【健康食品の「完コピ品」問題】フリマサイトで被害拡大 中国系出品者が大半、対策はいたちごっこ

偽造品(写真左)と正規品の乾燥剤


健康食品の「完コピ品(完全コピー品)」が流通するトラブルが相次いでいる。富士フイルムヘルスケアラボラトリーや大塚製薬、ビタブリッドジャパンなど、複数の大手健康食品メーカーが3月以降、サイト上などで消費者に向けて、模倣品の購入に関する注意を呼び掛けている。本紙が取材を進めたところ、完コピ品の多くが、中国で不正に製造され、中国出品者によって日本のフリマサイトやアマゾンなどのECプラットフォームに出品されていることが分かった。模倣品対策に詳しい、日本貿易振興機構(JETRO)では、健康食品の模倣品対策として、「模倣品の出品事業者のアカウント停止を、ECプラットフォームに対して要請する」方法を推奨している。ただ、ECプラットフォームが動けないケースもあるという。不正な出品者が後を絶たないことから、いたちごっこになる懸念もありそうだ。



完コピ品には類似パターン


健康食品の完コピ品は、パッケージや中身の錠剤に至るまで、消費者が見分けるのが困難なほど、精巧にコピーされていることが多い。

メーカーが購入して正規品と比べてみても、判別がつきにくいケースがあるという。パッケージのパウチの開け口の表示のフォントが微妙に異なっていたり、パッケージのデザインの色味が微妙に異なっていたりするところから、なんとか見分けているのが現状だ。ただ、完コピ品は、錠剤と共に同梱されている乾燥剤が、正規品の乾燥剤と異なることが多いという。こうした点は、複数のメーカーの完コピ品で共通しており、判別の大きなポイントとなっている。


▲開け口の表記に微妙な違いがある

ビタブリッドジャパンでは、機能性表示食品「ターミナリアファースト」の完コピ品がフリマサイトを中心に流通しているという。同社によると、フリマサイトで同商品を購入した顧客からの問い合わせがきっかけとなり、完コピ品の存在が発覚したとしている。購入した商品の成分を調べてみたところ、機能性関与成分である「ターミナリアベリリカ由来没食子酸」は含有されていなかったそうだ。完コピ品は、正規品と重量が異なっていたという。

ビタブリッドジャパンによると、顧客から問い合わせがあったものや、ビタブリッドジャパンが購入したものも含めて、10件の完コピ品の流通が確認されたという。現物として確認されたもののほかにも、多数の完コピ品が出回っているとみられる。出品画像などから、模倣品であると見受けられる出品は100件近くに及ぶという。

ビタブリッドジャパンでは、「模倣品の流通はあってはならないことだ。当社としては、警察の捜査に協力するとともに、偽造品の流通を監視し、偽造品の流通が確認されたら、プラットフォームの提供事業者などに出品削除などの対応をするように働きかけるなど、偽造品流通の監視・阻止に努めたい」(新馬場隼ブランドマネージャー)としている。

 

情報流出の発生も


JETROの北京事務所によると、「日本メーカーのサプリや化粧品の模倣品が、中国国内で製造され、日本国内や中国国内で販売・流通されているケースは、多く存在する。中国や日本だけではない。東南アジアのECプラットフォ―ムで、日本メーカーが知らないうちに、模倣品が、正規品として流通してしまっていることも多い」(知的財産部・太田良隆氏)と話す。

模倣品の製造・販売は、個人が行っているケースもあれば、犯罪集団が組織的に行っているとみられるケースもあるという。悪質な商品の販売は無数にあるため、実態はつかめないとしている。

中国越境ECに詳しい、東海大学客員教授の小嵜秀信氏は、「2010年代は、中国のCtoCプラットフォーム『タオバオ』で、日本メーカーの人気のサプリや化粧品の模倣品が、もれなく流通していた。現在は、日本のアマゾン上で売れるノウハウを習得した中国人セラーが、サプリの模倣品を出品するようになったのではないか」と分析する。

中国企業の情報漏洩によって、模倣品の流通が加速している実態もあるようだ。

中国EC市場に詳しいNintの堀井良威氏によると、コロナ以前は、複数の日本メーカーが、中国にある、特定の企業に、パッケージの製造と模倣品対策のコード識別システムの開発を委託していたという。その外注先が、パッケージを横流しし、別の会社が中身を充填。模倣品を製造・販売していたケースがあったとしている。

コード識別システムのアルゴリズムも、情報流出した外注先が管理していたため、模倣品をバーコードで読み取ると、「正規品」として認識されるという事態も起きてしまっているという。

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