2023.06.01

クイックコマース、相次ぐ撤退 OniGOは急成長、提携戦略が最適解か?


OniGOの店舗数は前年比4.8倍


一方、Qコマース市場で成長を続けている事業者もいる。OniGOは今年3月、店舗数が60を超えたと発表した。店舗数は前年比4.8倍と急拡大し、拠点数はQコマースで最大規模となった。急成長の背景には、小売企業との提携戦略がある。



2022年3月には、セブン&アイ・ホールディングスの完全子会社であるヨークと提携した。6月には関東でディスカウントストアを展開するビッグ・エーとの提携を発表した。

小売企業と提携することで、低コストで迅速な店舗展開を実現している。小売店舗の一角にQコマースの拠点を設けている。賃料を負担しない代わりに、提携店舗の商材をクイックコマースで販売することで収益へ貢献している。


▲ヨークと提携し、食品スーパーから商品をデリバリー

提携店舗の数千種類の商品をQコマースで取り扱うことで、購入単価も上がっている。夕飯などの食材の買い物などで利用されることで、平均購入単価が4000~5000円近くなり、リピート購入も増えているようだ。

OniGOは提携店舗の店頭価格から約10~20%を上乗せした金額で販売し、加えて約300円を配送料として利用者から徴収している。

「当社の『Qコマース』ではすでに50店舗以上が小売店舗との提携拠点だ。ダークストアは数店舗しかない。今後も小売店舗との提携を強化する。すでに店舗によっては黒字化を達成しており、将来的には全店舗の黒字化を目指す」(梅下直也社長)と話す。


▲梅下直也社長

小売企業以外にもフードデリバリー最大手の「Uber Eats」と提携し、販売チャネルを拡大したり、配達員の確保につなげたりしている。

「他のフードデリバリーと提携する可能性もある。われわれとしてはオープンに提携していく考えだ」(同)と話す。

拠点運営の省力化・効率化を図るための仕組み作りにも注力している。少ないスタッフで効率的に運営できるように、独自のシステムを開発し、改善し続けているという。


生き残るのは数社か


Delivery Hero Japanにいた佐藤氏は、「Qコマース自体はすごくポテンシャルがあると思う。多くの企業が生き残るのは難しいかもしれないが、数社の主要なサービスがしっかりと事業を継続していく可能性は高いと思う」と話す。

日本の複雑な市場環境においては、OniGOのような柔軟かつスピード感を持って提携戦略を駆使し、ローコストに市場シェアを獲得していく戦略が今のところ優位に見える。 

一方、ヤフーのような顧客基盤やマーケティング力に強みがある大手企業が今後、どのようにQコマースを拡大していくのかにも注目が集まる。

Qコマース市場は多くのプレイヤーが参入した第1フェーズから、市場環境にフィットした事業者が生き残りをかけて鎬(しのぎ)を削る第2フェーズに突入したといえるだろう。





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