2022.10.24

「医薬品誤認」否定のインシップ判決で業界激震!消費者団体は広島高裁へ控訴

岡山地裁は適格消費者団体の訴えを棄却した


【記者の目】景表法改正で適格消費者団体の権限強化へ 消費者団体の証拠の確保有利に


インシップ判決では、①の争点が認められなかったため、②の「サプリに『頻尿改善効果があるかないか』を争うエビデンス勝負となった。

結果的に、岡山地裁は、「頻尿改善効果の可能性は否定しきれない」という判断を下した。

前出の関山氏は、「①の争点が採用されなかった結果、原告側は、『商品に効果がないことを証明する』という、いわば“悪魔の証明”を強いられることとなり、勝ち目がなかった。今後も、適格消費者団体による差し止め請求の裁判の勝敗は、①の争点が採用されるか否かにかかってくるのではないか」と話す。

適格消費者団体は、サプリや健康食品原料の専門家ではない。世界的にも流通している「ノコギリヤシ」の効果について否定する証拠を提出することは、困難を極めたに違いない。

消費者庁が現在開催している「景品表示法検討会」では、「適格消費者団体との連携強化」が、検討課題の一つになっている。年内を目途に検討を行うのだという。

これまでの議論では、「適格消費者団体との連携」について、主に①適格消費者団体に不実証広告規制(※)や、それに類似する権利を付与する ②消費者庁と適格消費者団体が、行政執行などに関連して得た情報を共有する――といったことも検討されてきた。

①の不実証広告規制については、検討会でヒアリングを行った複数の消費者団体が導入を主張した。ただ、議論においては、民事訴訟法との関係から、「ただちに導入することは現実的ではない」といった方向で議論が進んでいる。

②については、何らかの形で、消費者庁と適格消費者団体の間で、違法表示を行った疑いのある事業者について、情報連携ができる体制が構築される可能性が高まっている。

今後、消費者庁との情報連携が進めば、適格消費者団体が事業者の不当表示の根拠をより明確に示せる形で、広告の差し止め訴訟を提起できるようになる可能性もある。そうなれば、事業者にとって訴訟展開が不利になることは、否めないだろう。

まずは、インシップ判決の控訴審の行方を注視したい。
 

【※不実証広告規制とは】
消費者庁が、優良誤認表示に該当するかを判断する場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる制度。事業者が求められた資料を期間内に提出しない場合や、提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合には、不当表示とみなされる。



RECOMMEND合わせて読みたい

RELATED関連する記事

RANKING人気記事