2022.07.22

【「nicoせっけん」がSNSで話題】エレファント 山口武代表「真面目な通販でも70%増収のヒット」

「nicoせっけん」(左)と山口武代表


1年間、1個も売れない


――発売してすぐに売れたのか?

本格的に販売を開始したのは2017年5月。実はその1年前くらいからから販売していたが、1個も売れなかった。通販コンサルの仕事が忙しいことを言い訳にして、中途半端なランディングページ(LP)を作り、ネット広告を少し試しただけだった。

当時は私と妻の2人しかスタッフがいなかった。子どもが小さかったこともあり、進行管理は自分1人でやるしかなかった。

1年越しにLPを作り直し、広告も見直したら少しずつ売れるようになった。その後、2年間くらいは、GoogleやFacebookの広告が集客の中心だったが、代理店の提案もあり、インスタグラムのインフルエンサーを活用したPRも試すようになった。代理店がリクルーティングしてきたインフルエンサーと契約し、最初は月1~2人に商品PRの投稿を依頼していた。成果報酬型のPRも試していく中で、あるときから一気に集客が増えた。

――インフルエンサーマーケティングに成功した方法とは?

代理店の話では、有力なインフルエンサーが「nicoせっけん」を気に入り、積極的に情報を発信してくれるようになったのだという。もちろんインフルエンサーにとっても仕事なのだが、それよりも自分が子どもに使ってみて、「本当に良かった」という思いが投稿に表れていた。当社までお礼の連絡をしてくれた方もいた。気に入ってくれたインフルエンサーは投稿頻度が増えたり、投稿内容がよりリアルになったりする。中には勝手に漫画を用いた記事LPを作ってくれる方や、かなり凝った内容をストーリーズで投稿してくれる方もいた。

インフルエンサーマーケティングの投稿パターンは型にはまりがちだが、オリジナリティーの高い投稿が増えたことで、集客力が一気に拡大した。商品が売れるとインフルエンサーにも収益は還元される。報酬につながる商品だとインフルエンサーの間で話題になり、多くの方が紹介してくれるようになったようだ。今では月に300人くらいのインフルエンサーが投稿してくれている。


売上目標立てないが目標


――今後の目標は?

製造方法にこだわったため、対応できる工場が少なく、このままいくとお客さまを待たせることになってしまう。そのことが逆にプレミア感につながる面もあるのだが、生産体制を強化し、そうならないようにしたい。

商品を必要としている多くの方に商品を届けたいという思いはあるが、「売り上げ目標を立てない」ことを目標にしている。数字を目標にした途端に、意思決定がブレてしまう可能性がある。攻めたコピーを多用したり、商品コンセプトをアフィリエイトに最適化してしまっては、長期的な利益につながらないと考えている。売り上げや利益を求めるために、売り上げや利益の目標を決めないという戦略だ。

「通販ってそういうものじゃないだろ」という思いもある。通販は個人や小規模な事業者でも、良い商品を考案したら、ネットや紙を使って売り出すことができるものだ。自分は夢を追いかけて、新卒で入った大企業を5カ月で退職し、その後、路頭に迷いそうになったときに、通販業界に拾ってもらい、人生が救われた。通販は金もうけの道具に使われることも多いが、それを全部ひっくり返したいと思っている。その思いが「nicoせっけん」に取り組む原動力になっているのかもしれない。


【山口武代表<プロフィール>】
1977年、埼玉県生まれ。埼玉県立浦和高校、慶應義塾大学法学部を卒業後、大手メーカーに就職するが、5カ月で退職。3年間、フリーターをしながら小説家を目指す。26歳で「社会復帰」後、転職を繰り返し、スキンケア通販のベンチャー企業に入社。管理職として年商120億円の達成に貢献。その後、ゼロからの通販立ち上げを複数経験する中で独自の手法を確立。2014年、エレファントを設立し、代表取締役に就任。単品リピート型通販の立ち上げに特化したコンサルティングを行う。2017年5月、敏感肌の子どものためのスキンケア通販「nico」を本格的に開始した。




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