2023.11.06

【進化するEC企業のリアル展開】ポップアップストアより「本格的」「手軽な」手法登場 ECのCPA半分の事例も


ネット広告のCPA(顧客獲得単価)が高騰し、アフターコロナでリアルの人流が拡大する中、EC企業のリアル展開が加速している。実店舗を持たないEC企業のリアル展開というと、ポップアップストアが一般的だが、より本格的な手法や、もっと手軽な手法が登場している。期間限定だが、実店舗のようにブランドの世界観を伝え、顧客データも収集できる新型店舗モデルも話題だ。既存の実店舗を代理店のように活用できる手法や、自動販売機に出品する手法も注目を集めている。中にはECの半分のCPAで顧客を獲得できている事例もあるという。



世界観を反映した店舗を期間限定で運営


ポップアップストアは商業施設などにEC企業のブランド店舗を構え、新規顧客との接点を作ることができる。しかし、商業施設内の制約により、ブランドの世界観を表現し切れないケースが多い。さらに顧客データを取ることは難しく、ECサイトへの送客に課題があった。

統合コマースプラットフォーム「ecforce(イーシーフォース)」を提供するSUPER STUDIO(スーパースタジオ)が今年7月、東京・渋谷の「MIYASHITA PARK(ミヤシタパーク)」内に開設した次世代型店舗「THE [ ] STORE(ザ ストア)」は、そうした課題を解消している。


▲「THE [ ] STORE」の外観

同店舗には、EC企業やD2Cブランドが最短1週間から出店できる。接客スタッフは店舗側が用意するため、EC企業が用意する必要はない。

一般的なポップアップストアとの1つ目の違いは内装だ。実店舗を丸々貸切ることができるため、ブランドのコンセプトに合わせた内装にすることができる。

もともとシンプルな内装となっているため、店頭の大型モニターや2面のデジタルサイネージを活用するだけでも手軽にブランドの世界観を反映できる。什器をカスタマイズしたり、自前の什器を持ち込むことも可能だ。


▲ブランドの世界観を反映した内装にできる

「THE [ ] STORE」の責任者でSUPER STUDIO執行役員の大谷元輝氏は、「ポップアップは棚を借りるイメージで、出店する施設によって形態が異なるため、再現性が低い。『THE [ ] STORE』は実店舗をフルに活用できるので、直営店舗を試しに運営してみるイメージに近い。同じ内装や導線の実店舗を他の場所で再現できる。内装についても、契約終了時に原状回復してもらえればいいので、自由度が高い。11月に出店するブランドは施工を入れて、本格的に内装を変える予定だと聞いている」と話す。


顧客データを収集可能


ポップアップストアとの、もう1つの大きな違いは、顧客データを取れることだ。

「THE [ ] STORE」では、POSレジは置かず、店頭商品を販売する際も「ecforce」の仕組みを活用し、EC決済してもらう。店頭のQRコードを読み込み、特設サイト上で決済してもらい、店頭で商品を渡す流れだ。後日、自宅で受け取ることもできる。


▲店頭でQRコードを読み込みEC決済で購入

「『ecforce』でデータを取るため、顧客データがECと集約できる。顧客データを基に、定期購入を促したり、別の商品をプッシュしたりすることも可能だ。基本的に現金決済に対応していないが、これまではそれが購入の大きな障壁になっているとは感じていない」(大谷氏)と話す。

「ecforce」を導入していない企業でも、特別仕様のシステムを導入してもらうことで、出店可能だという。

「今年7月の開設から現在(10月27日時点)までに14ブランドが出店している。『MIYASHITA PARK』という立地のおかげもあるが、出店期間中のCPA(顧客獲得単価)がECの半分程度だったブランドや、出店したことで過去最高売り上げを記録したブランドもある。ブランドによっては売り上げを優先せずに、ブランディングや情報発信の拠点として有効活用するケースもある」(同)と話す。


▲ブランドの情報発信拠点として活用するケースも

「THE [ ] STORE」は来年3月中旬まで、出店企業が決まっているという。

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