2023.10.20

「ディセンシア立ち上げ時はCPO2万円の時もあった」オルビス小林氏がしくじり体験談語る【D2Cの会 フォーラム2023<講演要旨>】

「D2C業界のしくじり先生」のセッションの様子


通販・D2Cのコンサルティングを手掛ける売れるネット広告社はこのほど、「『D2Cの会』フォーラム2023」を開催した。オルビスややずやなど、通販・D2Cを運営する企業の社長・担当者が多数登壇した。本連載では、フォーラムで開催された講座のハイライトを紹介する。第2回は、オルビスの小林琢磨社長、北の達人コーポレーションの木下勝寿社長、やずやの矢頭徹社長の3人が行った、「D2C業界のしくじり先生」というテーマのセッションを取り上げる。



 “取れる媒体”を探す?


田岡:D2Cの会社を経営してきた年数が合計60年の、3人の経営者に過去の失敗談を話してもらいたい。D2C業界の多くの経営者には、この失敗談を参考にして、事業の成功確率を上げてもらいたい。まずは、化粧品メーカーのオルビスの小林氏から話してもらいたい。

小林:「取れる媒体を必死に探し続ける」ことで、資金をなくしていった経験がある。ポーラ・オルビスグループの敏感肌用スキンケアブランド「ディセンシア」を立ち上げた時、新規顧客が取れないことに悩んでいた。そこで、いろいろな人に会っては、「取れる媒体はないか」「どの媒体が取れるか」といった情報を集め、さまざまな媒体への出稿を試していた。利益を出さないまま、追加の借入も行った。時には、CPO(顧客1人当たりの獲得単価)が2万円という状態のときもあり、全く顧客獲得につながらなかった。

田岡:当時、問題点はどこにあると考えたか?

小林:顧客が獲得できなかったのは、 「人がどのように行動変容するか」「どのように商品を購入するのか」という基本を無視して走り続けていたことだと考えた。

当然のことではあるが、問題は「この媒体だから取れる、取れない」ということではない。「自分たちの顧客は誰なのか」「その顧客がその媒体にいるのか」「その顧客に刺さるクリエーティブや、評価される商品が作れているのか」ということだ。こういった点をすべてきちんと把握し、PDCAを回していくことが重要だった。


LTVの計測を確実に


田岡:健康食品や化粧品を扱う、北の達人コーポレーションの木下氏には、「アバウトなLTVの計測で赤字に!」という失敗談について話してもらいたい。

木下:当社は事業開始当初、商品のLTVを計算し、そこから逆算して設定した上限CPO以下で集客することで、売り上げもそれに応じて上がっていくと考えていた。

しかし、なかなか利益が上がらないため、LTVを計測し直してみた。すると、広告媒体ごとにLTVがかなり違うことが分かってきた。当時、ポイントバック系のサイトでは、比較的低いCPOで新規顧客の獲得がうまくいっていた。一方で、ポイント目的の購入者は、やはりリピート率が低く、それがLTVの低さに影響していた。

田岡:現在、LTVの管理について、媒体やオファー、クリエーティブなど、どのくらいの精度で行っているか。

木下:最低限、広告媒体ごとのLTV計測は行う。さらに、初回購入者に対して特別なオファーをつけたときや、LTVに影響を与えそうなクリエーティブを使用したときも、LTVの再確認は必要だと考えている。

例えば、即効性がありそうで、長く使い続けることでも効果が表れそうな商品があった場合、「即効性がある」という訴求をメインにした方が、CPOは下がる傾向があるが、LTVは伸びづらい。

そういったクリエーティブの違いなどを考慮して、定期的な計測ではなく、その都度確認するという形をとっている。






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