2023.07.24

【「高客単価」「利益最優先」の戦略を聞く】cotta 黒須綾希子社長「今期からより法人向けに注力」


製菓材料のEC事業を展開するcotta(コッタ)が転換期を迎えている。2022年10ー2023年3月期(第2四半期)の売上高は、前期比3.3%減の49億4900万円だった。営業利益は同46.0%増の6億400万円となった。営業増益の要因について、黒須綾希子社長は「個人向けの販売は過渡期を迎えており、今期からより一層、法人にリソースを集中していることが奏功した。今期含めて、これからは法人向けに注力し、”高客単価””利益最優先”の戦略を掲げていく」と語る。黒須社長に個人・法人の需要の変化、今期の戦略などを聞いた。



――貴社は個人向けの販売と法人向けの販売を展開している。今期のこれまでの個人向けの販売について振り返ってもらいたい。

個人向けの販売に関しては、まさに転換期を迎えている。今期の個人向けの売り上げは、第1四半期、第2四半期とも前年同期を下回っている。

コロナが5類に移行されたこともあり、街中に人流が戻っている。百貨店や商業施設で食事したり、お土産にパンや菓子を買ったり、旅行や外食に時間を使う人が増えている。このことが当社の個人向け販売に大きく関係している。
 
当社はパンや菓子を作る原材料を提供しているため、外でパンを購入する人が増えると、自宅でパンを作る人が減少する。コロナが特に猛威を震った2020・2021年は在宅時間の増加の関係で、「家にいて時間もあるから、パンやお菓子作ってみようかな」と思った人が大勢いたが、今はそのような人が、コロナ最盛期のときと比較すると当然減っている。 
 
――そのような厳しい外的要因がある中、どのように個人向け事業の再拡大を図っていくのか?
 
私の感覚になるが、しばらく個人向けに関しては事業スピードを緩めてもいいのではないかと考えている。先ほど申し上げたことを考慮すると、個人向けの販売がこれから毎年、年次30~40%増の売り上げ増になるのは、現実的に厳しい。コロナ禍で急成長した個人向け販売は、あまり無理をせず、現実的な売り上げ目標を掲げるのが最適だろう。
 
ただ、誤解してほしくないのだが、決して何もしないということではない。今まで以上に、「『cotta』で購入してもらうための理由や付加価値の提供」を考えていかなければ、現状維持も厳しくなるだろう。
 
今期から個人向け販売に関しては、今までやったことのない施策に取り組んでいる。今年6月には、「夏の宝石、キラキラスイーツ」と題して、「これから迎える暑い夏、ジュレやアイスクリームなど、キラキラ光るスイーツを作りませんか」というキャンペーンを行った。

キャンペーンの期間中、手作りのキラキラスイーツの写真を、指定のハッシュタグ「♯夏の宝石」を付けて、SNSへの投稿を依頼した。応募した投稿者の中から抽選で50人に夏のスイーツ作りに適した5000円相当のグッズをプレゼントするというキャンペーンだ。

「バターが安い」「小麦粉が安い」という購入動機だけでは、今後戦っていけない。「『cotta』に訪れるとワクワクして、なんだか菓子を作りたくなる」という場所にしていく。

――貴社の法人向けの販売について伺いたい。”高客単価””利益最優先”の戦略はどのようなものなのか?

新たな顧客層として、年商1000万円くらいのスモールビジネスの個人事業主を獲得することに成功している。コロナで在宅時間が増えた会社員が副業として、自分でパンや菓子を作って、ネットで販売するという人も増えた。そのような人を法人向けECサイトの「cotta business」で刈り取ることができた。
 
「cotta business」は小ロットからの注文に対応するほか、原材料に加えて資材や厨房用品など約3万点の商品を取り扱っている。

多くの菓子販売店では、小麦粉はA社、油脂はB社、資材はC社のように分けているが、「cotta business」では全ての注文に対応できるため、手間がかからない。また小ロットで購入できる点も、新規顧客や中小企業には好まれる点だ。

法人からの注文は個人よりも、1回当たりの注文数が多い。小麦粉も数十キロ、箱や袋も数百枚単位で購入する。これらの点が”高客単価”につながっている。

増益についても、人件費と運送費をかなり効率化できたことが奏功している。生産力を向上したことで、新たに人材を採用することなく、今まで通りの人員で、今まで以上の量の商品発送を可能にした。運送費に関しては、客単価の高い法人の荷物が相対的に増えたことで効率化できている。
 
――どのように「cotta business」の認知を拡大したのか?

個人向けECサイトの「cotta」と広告の運用を行った。先ほどのスモールビジネスの消費者は全員が最初から「cotta business」を利用するということはない。

最初に検索流入や、SNS経由で「cotta」を知って、そこで商品との接点を取る。そのまま「cotta」で購入しようとしたタイミングで、「法人向けECサイト『cotta business』のほうが安く購入できる」と情報を記載し、サイトへの認知と送客につなげている。

――今期のこれからの取り組みは?
 
個人向けは継続して、「cotta」で購入する理由作りと、お祭りイベント、ファン化をテーマに事業を行っていく。
 
法人向けとしては、さらなる客数増加と一人当たりの購入単価の上昇に努めていく。これからはより一層オンラインでも一人一人の顧客とのつながりが大事になってくると考えている。
 
そのためにも、新たにコールセンターチームを立ち上げた。顧客からかかってきた電話を大事にし、一人一人に寄り添う。内製化すると、会社として実行したいことをスピーディーに行える。電話内容を共有し、その人に合った電話接客を提供し、売り上げ増加につなげていく。








 

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