2023.02.27

日本政府、ヨシキリザメの国際取引規制を拒否 中国の出方次第でコンドロイチン価格が高騰する可能性も

日本政府は2月22日、フカヒレなどに使われる「ヨシキリザメ」の国際取引を、新たに規制の対象とした、ワシントン条約の決定に対し、規制を受け入れない「留保」の姿勢を表明した。ヨシキリザメは、フカヒレだけでなく、健康食品素材「コンドロイチン」の原料としても使用されている。日本は「留保」したものの、中国など、原料の輸入元の国が「留保」を行わなかった場合、国際取引が行えず、コンドロイチンの原料価格が高騰する可能性もある。

2022年11月に開かれたワシントン条約締結国会議は、メジロザメ科のサメ54種を、同条約の「附属書Ⅱ」に掲載することを決めた。「付属書」に掲載された種の国際取引については原則として、一定の規制がかけられることになる。決定は2023年2月23日に発効した。

ワシントン条約は、絶滅のおそれがある野生動物の国際取引について、規制を設けている。取引を規制する対象を示す「附属書」には、規制の度合いに応じてⅠ~Ⅲの三つがある。「附属書Ⅱ」に掲載された種について原則として、輸出国が輸出許可証を発行しない限り、国際間の商業取引が行えない。

ただし、学術目的を除き国際間の商業取引が一切禁止される「附属書Ⅰ」とは違い、「附属書Ⅱ」については、締約国が「留保」することが可能。附属書に掲載された種を留保すると、その種については締約国としては扱われず、非締約国とこれまで通り取引を行うことができる。

ワシントン条約の決定に対して、日本政府は2月22日、「改正のうちブリオナケ・グラウカ(ヨシキリザメ)を付属書Ⅱに掲げる改正につき条約第十五条3の規定に基づいて留保を付する旨を条約の寄託政府であるスイス連邦政府に通告した」とする告示を、林芳正外務大臣の署名入りで公表した。そのため、日本と同様に「留保」した国との間の取引については、これまでと同様に行うことが可能となった。

ただ、ワシントン条約の決定を「留保」しなかった国から、例えば、ヨシキリザメを由来とするコンドロイチンの原料を輸入する場合は、輸出国の輸出許可証が必要になる。

「留保」しなかった国に対して、日本からヨシキリザメ由来のコンドロイチンサプリの製品を輸出する場合は、日本企業が輸出許可証を求められる可能性もある。経済産業省によると、日本は留保しているものの、許可証を発行することは可能だとしている。原料の原産国が発行する輸出許可証が必要になるケースもあるという。

国内の健康食品メーカーでは、コンドロイチンの大元の原料を中国から輸入しているケースも少なくない。健康食品業界では、中国がワシントン条約の決定を受け入れるかが、注目されている。

2月24日時点で、中国がワシントン条約の決定を受け入れたかについては、水産庁でも確認ができていないという。水産庁によると、中国はワシントン条約の締約国会議で、決定に反対する態度を表明していたそうだ。一方で、中国は2013年にも、サメの取引を規制するワシントン条約の決定について、「懸念」の態度を表明しつつも、最終的には受け入れる決定をしていたとも話す。「今回も、中国が留保するかどうかは不透明だ」(増殖推進部漁場資源課)としている。

中国産原料を使ったコンドロイチンのサプリを販売する、ある健康食品メーカーは、「OEM会社からコンドロイチンの原料価格が高まるかもしれないと言われている。豚由来など別の原料に変える必要があるかもしれない。ワシントン条約の規制対象に入った原料を引き続き使用することは、ブランド毀損(きそん)になりかねない」(製品開発担当)と話す。

玉突き的に、サメ以外の由来のコンドロイチン原料の価格が高まる可能性もありそうだ。サメ以外由来のコンドロイチンを供給する、ある原料メーカーの担当者は、「サメ由来の原料の供給がタイトになった結果、他の由来のコンドロイチンへの切り替えが集中する可能性もある。その結果、大元の原料の価格が高まれば、コンドロイチンの原料価格を上げざるを得なくなる可能性もある」と話している。





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