2023.01.12

【新規上場企業の戦略に迫る】サンクゼール 久世良太社長「店舗・ECで最良の顧客体験提供へ」

久世良太社長

「久世福商店」や「St.Cousair(サンクゼール)」などの食品店舗ブランドを展開するサンクゼールは2022年12月21日、東京証券取引所グロース市場へ新規上場を果たした。上場会見で久世良太社長は「『店舗』『EC』『サプライヤーネットワーク』を駆使して、消費者により良い商品と体験を提供していきたい」と語った。上場会見で明らかにした同社の戦略を紹介する。

サンクゼールは1979年創業のジャムやパスタソース、ワインなどの製造販売事業を手掛ける食品製造企業。創業以来、カタログ通販や「久世福商店」「サンクゼール」などの店舗運営、同ブランドのEC運営などを展開して事業を拡大してきた。

創業から40年経った今、上場した理由は、コロナ禍で売り上げを伸ばすことができたからだという。
 
「2022年3月期の直営・FC(フランチャイズ)店舗の売上高は、前期比26.5%増の105億3000万円、EC売上高は同25.0%増の9億円だった。業績拡大に加えて当社所在地の長野・上水内群近辺には上場企業は1社もなく、今後も開かれた企業として存続したいという思いもあり、上場を決意した」(久世社長)と説明する。
 
上場後の事業戦略として、主に①サンクゼールが強みとするサプライヤーネットワーク ②店舗運営 ③EC運営 ④店舗とECの相互送客(OMO)など――に注力していく計画だ。
 
サンクゼールは自社畑と自社工場のほか、日本全国500社以上に及ぶ生産者と協力して商品を開発している。上場後も生産者こだわりの商品を店舗、EC、ホールセールなどで国内外に販売するとともに、多様なチャネルで集めた消費者の声を生産者にフィードバックし、より良い商品開発に生かしていく。

「作り手を巻き込んだ双方向の商品開発で、消費者に良い商品を届けていきたい」(同)と語る。

店舗運営では地方の商業施設や百貨店を中心に出店を続けていく。業績拡大が難しかった都市部での出店は制限し、過去のデータ分析から精算が取れる地方への出店を強化していく。

「精力的な店舗展開は、ゆくゆくは当社のECサイトを知ってくれるきっかけにもなってくれるはずだ」(同)と捉えている。
 
サンクゼールのEC売上高の半分は、ギフトが占めており、上場後もギフトに特化したサービスと商品に注力する。
 
「オリジナルメッセージカードを添えられるギフトサービスが好評を集めている。なかなか他社には見られないサービスだろう。今後もこのサービスには注力しつつ、新たなEC限定サービスも開発していきたい」(同)と話す。
 
ECでは何度もサンクゼールを利用するコアなファンの育成に力を入れる。インスタグラムやツイッターなどで「UGC(ユーザー生成コンテンツ)マーケティング」を展開し、何度も商品を購入してくれる顧客が作り出すコンテンツを活用して、潜在顧客に購入を促したい考えだ。
 
精力的に出店を続ける戦略がOMOを強化する施策の一環になっている。ほかにもアプリを活用し、店舗とECの購買データを共通化し、最適な販促展開を実現する。
 
需要のある地域への出店を強化するとともに、店舗とECの利便性を高めて、顧客のLTV(顧客生涯価値)向上につなげていく。
 
「個人的希望だが、今後5年以内にEC売上高を20億円にまで増加させていきたい」(同)と意気込みを示す。




RECOMMEND合わせて読みたい

RELATED関連する記事

RANKING人気記事