2022.12.22

I-ne 伊藤翔哉執行役員「1000のアイデアから再現性のあるヒット生み出す」【「D2Cフォーラム」ダイジェスト<第4回>】

I-neの伊藤翔哉執行役員が商品開発について語る


通販・D2Cのコンサルティングを手掛ける、売れるネット広告社はこのほど、(公社)日本マーケティング協会と共同で、「D2Cの会 フォーラム2022」を開催した。オルビスや北の達人コーポレーションなど、通販・D2Cを運営する企業の、社長や担当者が多数登壇した。本連載では、フォーラムで開催された講座のハイライトを紹介する。三つ目のセッションでは、office Kの田岡敬氏が、ヘアケアブランド「ボタニスト」を展開するI-neの伊藤翔哉執行役員ダイレクトマーケティング本部長に、商品開発の秘訣について聞いた。



独自の開発プロセス


伊藤
:当社は「ボタニスト」「ヨル」「ドロアス」の伸長により、ヘアケア市場のシェアは日本で3位となっている。「サロニア」はヘアアイロン市場で2年連続1位となっている。「ボタニスト」ブランドの現在の売上比率は約45%だ。

田岡:ということは、「ボタニスト」以外の売り上げが大きいということになると思うが、どのようなマーケティングを行っているのか。

伊藤:当社独自のブランド開発プロセス「IPTOS」というテストマーケティングのフレームワークを活用しており、ヒットの再現性のあるマーケティングを実現している。

まず、300人強の社員全員によって、毎月約1000個のアイデア(「I」=Idea)を出す。ここでは実現可能性は追求していない。そのアイデアを100個程度にしぼり、企画(「P」=Plan)と検証(「T」=Test)で、コンセプト調査やHUT(ホームユーステスト)調査などを行う。

当社では最終的に、オフラインでの展開を目標にしているため、オフラインの売上目標から逆算(「O」=Оnline/Offline〈EC/一部小売〉)し、本格販売(「S」=Scale〈ECスケール/小売り本格展開〉)を開始するという流れのビジネスモデルだ。


予測精度99.8%


田岡
:需要の予測精度は99.8%(*3)ということだが、予測精度の仕組みについてうかがいたい。

伊藤:以前は、オンラインで売れれば、オフラインでも同じように売れると考えていた。しかし、複数ブランドを展開していくうちに、必ずしもそうではないことに気付いた。そのため、新しい予測精度の仕組みを作った。KPIと売り上げ相関を明確化した数理モデルで売り上げ予測をし、PlanとTestを往復する。

たとえば、20億円のブランドを作るためには、購入意向調査とHUT調査で一定の点数を出す必要がある。

そのため、OEMに協力を依頼し、何度も改良を重ねる。そして、在庫リスクの減少をめざし、投資効率を向上させていくという作業を行う。

田岡:多くのブランドがあるなかで、どういう人材をアサインするとヒット率が上がるのか。

伊藤:当社の過去の事例では、セールスの意見を聞かずに、マーケティング単体で進めていくとヒットしないことが分かっている。当社には、大手企業のように優秀なマーケッターがいるわけではないため、まずはプロのプロジェクトマネジャーになれるかどうかだと考えている。

ドラッグストア向けのセールスマンやEC担当者の話を聞いて進めていくことで効率を上げられるが、時間が莫大に必要となるため、そのバランスをいかにうまくとっていくかが、現在の課題でもある。

田岡:ヘアケアのアイテムで、消費者に重視されるポイントはどこか。

伊藤:仕上がりについては、価格に関係なく好みが大きく分かれるため、香りにポイントを置いている。500世帯ほどに向けたHUT調査を行うが、主婦、インフルエンサー、アーリーアダプターなど、対象者を分けてテストをしている。最終的にはチームメンバーが決定している。

田岡:「IPTOS」のアイデアから始まり、ローンチまでのゲート通過率はどの程度か。

伊藤:最初の1000個というアイデアから考えると、100分の1程度になる。需要予測チームだけで3人、商品開発チームには十数人を配置し、固定費をかけて商品開発を手掛けている。





RECOMMEND合わせて読みたい

RELATED関連する記事

RANKING人気記事