2023年のEC市場のキーワードとして、「OMO(オンラインとオフラインの融合)」に変わって、「ユニファイドコマース」という言葉が注目されるようになっている。アフターコロナの機運が高まり、店舗で購入する機会が増加する中で、オフライン・オンライン・アプリ・ウェブなど、顧客との接点のデータを統合(ユニファイド)して分析し、さまざまな角度から顧客理解を深めて戦略構築や販促に生かすという考えだ。D2C/定期通販特化型ECプラットフォーム「リピートPLUS」とOMO/オムニチャネル特化型ECプラットフォーム「w2Commerce」を提供するw2ソリューションの山田大樹代表取締役CEOは、「『ユニファイドコマース』には、『会員データ』『在庫データ』『決済データ』の三つを、段階的に統合する必要性がある」と指摘している。山田CEOと、w2ソリューションのパートナー企業であるSBペイメントサービスの営業本部の桑原康弘本部長、小原澤映樹アカウントエグゼクティブに、「ユニファイドコマース」を実施するために必要となる、EC企業の体制整備と、2023年のEC市場の展望について、語ってもらった。
新たな顧客体験が進んだ2022年
――2022年のEC市場の動きはどうでしたか?
▲w2ソリューション・山田大樹 代表取締役CEO山田:2022年は9月ごろから、行動制限が解除されたのに伴い、都市部を中心に、店頭での購入へと回帰する動きが見られるようになっています。
コロナ以降は、EC市場が拡大し、新しい顧客体験が求められる中で、いかに利便性を変えるかという点が追求されてきました。その一つとして、SNSを販促に活用するのも当たり前になってきました。
2022年は、withコロナの時代に突入し、店舗での購入が復活してきたことで、店舗とオンラインを連動させようという流れが強くなってきています。
桑原:決済の部分についても、オフラインとオンラインの連携が進み、その垣根がなくなってきています。
例えば、飲食店に行くにしても、先にオンラインで予約と決済をして、お店では受け取るだけというケースもあります。洋服を店頭に見に行って、購入はスマホでオンライン決済するという利用の仕方も出てきています。
「PayPay」などのキャッシュレス決済も多様化し、さらに浸透しています。消費者は、どの決済手段が自分にとって「お得」なのかを常に考え、選択して使い分けています。事業者が変わる前に、消費者の意識が変わってきています。
小原澤:「OMO」の考えは一歩さらに進み、コマース全体としてさまざまなデータを活用しようという「ユニファイドコマース」という考えに変わってきています。
「ユニファイドコマース」の幕開けに
――2023年のEC市場はどう変化していくと考えますか?山田:2023年は、「ユニファイドコマース」の幕開けになると思っています。
既存のEC事業をリニューアルしたい、新しい仕組みを導入したいと考える事業者が、顧客体験を最適化する「ユニファイドコマース」の導入を検討するケースが増えていくでしょう。
「ユニファイドコマース」の一つの形としては、店舗スタッフによるライブコマースがあります。
店舗での接客と変わらない接客を、オンライン上で提供してほしいといった需要に対応するため、インスタライブで店舗スタッフが商品のコーディネートの仕方や素材の質感などを説明します。
その上で、ECサイトでの購入に誘導したり、ライブ配信を見た顧客限定でデジタルギフトを配布したりするといったようなことが可能です。ライブコマースという新しい施策を、事業者が思考錯誤して取り組んでいくことが想定されます。
桑原:「ユニファイドコマース」の考えの背景には、「運用の最適化」があります。当社の加盟店を見ても、決済手段を、「運用上負担が少ないか」「お客さまと企業の両方にとって最適な方法か」といった視点で選択するケースが増えています。手数料の安さが決め手ではなくなってきています。
▲SBペイメントサービス・営業本部 桑原康弘 本部長企業の考え方によって、どんな「ユニファイドコマース」を構築するのかが変わってくると思います。「ウェブで商品を見て店頭で購入してほしい」というケースもあるでしょうし、「店は試着したり、商品を見たりするだけで、購入はオンラインでしてほしい」というケースもあります。店舗の規模感や、取り扱う商品によって最適な方法を選択していくことになるでしょう。
小原澤:「ユニファイドコマース」という考え方では、「EC」という考えはなくなります。自社の「コマース」全体として、考えることになります。本格的に検討する企業では、部署間の隔たりもなくなっていくのではないでしょうか。