2022.12.16

バルクオム 野口社長「市場にない使用感を追求」 売上をアップする『商品開発』の黄金法則【「D2Cフォーラム」ダイジェスト<第3回>】

バルクオム 野口卓也社長が商品開発について語る


通販・D2Cのコンサルティングを手掛ける、売れるネット広告社はこのほど、(公社)日本マーケティング協会と共同で、「D2Cの会 フォーラム2022」を開催した。オルビスや北の達人コーポレーションなど、通販・D2Cを運営する企業の、社長や担当者が多数登壇した。本連載では、フォーラムで開催された講座のハイライトを紹介する。3つ目のセッションでは、office Kの田岡敬氏が、メンズスキンケアを展開するバルクオムの野口卓也社長に、商品開発の秘訣について聞いた。



市場にない使用感


田岡:2013年発売のメンズスキンケアブランド「バルクオム」の開発から発売までのプロセスについて聞きたい。

野口:私が23歳のとき、化粧品の知識がゼロのままスタートした。最初は、全国にある約100社のOEM会社に、電話やメールなどいろいろな方法で問い合わせをした。そこからスクリーニングして、コミュニケーションを図ったのが13社だった。しかし、最終的には、この13社には入っていなかったサティス製薬との契約になった。

13社それぞれの会社からベースサンプルの提供や、設計の提案をしてもらったが、どれも「ずば抜けている感」がなかった。私が重視していたのは、「これまでになかった使用感」だった。化粧品の処方や品質の確かさ以上に、ユーザーは最初に手に取った感覚や使用感などでモノの良し悪しをフィードバックする。そのため、品質と使用感を両立させたいと考えた。

田岡:「これまでになかった使用感」とは具体的にどういったことか。

野口:「市場に存在しないテクスチャー」をできるだけ表現したいと考えた。洗顔料を例にすると、「クリームっぽい生石けん」だ。驚くほどの泡立ちでさっぱり洗える。最初の使用感が斬新でインパクトが強い設計になっている。

田岡:「これまでにない使用感」は、逆に受け入れにくさにもつながるのではないか。

野口:その点は、ギリギリを目指す商品作りをした。最終的には、ユーザーターゲットである20~30歳代の男性100人を集めて、市販商品上位5つと合わせてブラインドテストを行った。ファーストインプレッションを把握するために、とくに「使用感」「香り」「満足度」の3点を重要視した。そのすべてについてナンバーワンがとれたため、商品化した。

田岡:「本番クオリティーの試作品」でブラインドテストを行ったということだが、これはどういったことか。

野口:試験管レベルではなく、本番の商品と同じものでテストを行うということだ。試験管レベルで作ったものと、実際に釜で作ったものでは、品質に違いが出てしまうことがよくあるからだ。


知覚品質の追求


野口:現在も、「市場に存在しないか、まだ市場の中で突出して目立っていない、高い知覚品質を得られる形状のテクスチャー」を追求している。「知覚品質」というのは、実際の品質とは別に、ユーザーが商品の品質をどのように受け止めるか、そこをきちんと表現できているかということであり、その点を厳しく見ている。

田岡:それは、テクチャーや香り、パッケージデザインなどで、どれだけ表現できているかということか。

野口:その通りだ。また、定番商品については、最低3000件以上のブラインドテストを実施し、さらに10人程度の定性調査も行なっている。1on1(ワンオンワン)でのインタビューでディープヒアリングも行っている。その結果、すべての項目において1位にならなければ、商品化はしていない。

田岡:定量と定性の調査はどのように使い分けているか。

野口:定量は、使用感や満足度、香りなど、すべての項目について1位にならなければ商品化しないという足切りだ。定性は、ヒントを得るための調査と位置づけている。「パッケージや使用感のフィーリングの結果から同梱物やクロスセルなどについて考える」といったように、我々のイマジネーションを刺激するためのプロセスとしている。

今後も、“品質”と“知覚品質”を明確に区別し、“知覚品質”をサイエンティフィックに追求・調査していく。


 



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