P2CのビジネスモデルがCRMの極みとなる
近年台頭しているP2C(Person to Consumer)と呼ばれるビジネスモデルは、まさにCRM(顧客関係管理)の極みである。
インスタグラマーやYouTuberなど多数のファンを持つ個人が、ブランドを立ち上げ、SNSなどを通じてECでプロダクトを販売するビジネスモデルだ。
ブランド立ち上げ前からすでに生い立ちやバックボーンをよく知るファンコミュニティーが形成されており、そこにその個人の展開するプロダクトやサービスをローンチすることで購買へとつながる仕組みである。
そうすることで、成功確率を上げると同時に、コストも必要最低限に抑えられるため、近年トレンドとなっているのだ。
1つ事例をご紹介しよう。
米国でシンガーソングライターや俳優、モデルとして活躍するリアーナは、コスメ、下着、アクセサリーなどのブランドを手がけていることでも有名だ。なかでも「Fenty Beauty」というコスメブランドは、50色ものカラーバリエーションのファンデーションを展開することで、彼女のファンだけでなく、世界中の人々から注目を集め、商業的にも大成功を収めている。
50色ものバリエーションには、彼女のメッセージがこめられている。従来、ファンデーションは白人の肌に合うものが多く、広告に露出している人の多くは白人の方々だった。
そのなかで、黒人であるリアーナが50ものカラーバリエーションがあるファンデーションを出すことで、「人類にはいろんな肌の色があって、いろんな好みがある。あらゆる肌の人が自分に合うファンデーションを楽しめるように」というメッセージを伝えたのだ。
さらに「Fenty Beauty」のサイトには、「メイクアップは、あなたが楽しむためにある。自由にチャンスをつかんで、リスクを取って、新しいことや違うことをする勇気を持つことになる」(大意)といったブランドとしてのメッセージが紹介されている。
このメッセージを受け取った消費者は、人種問題やダイバーシティ&インクルージョンといった、社会的な視点とリンクして「Fenty Beauty」というブランドの意思を感じ取る。
50色のバリエーションの向こう側に、企業としての社会的な存在意義や意味を見出し、そこに共感して、投資や応援の意味もこめた購買という行動を起こしている。
これだけの商品があふれる時代に支持されるためには、単にプロダクトのスペックをアピールするだけでなく、個人を媒介して、ブランドとしての「意思」を消費者に伝え、そこに共感してもらうことが必要なのだ。
我々の支援するクライアントの中にも、P2Cを軸とした商品開発、マーケティング戦略をとられる方が実際に増えている。
D2Cで新規獲得を行う場合、広告ではない形で、商品のローンチ前にクラウドファンディングやオウンドメディアを先に立ち上げ、ブランドのストーリーや想いを発信する仕組みをとるブランドも最近は多い。
そこに支持をいただけるファンコミュニティーを購買前から形成し、その後プロダクトを展開することにより新規獲得につなげていく手法である。
つまり、広告以外のコミュニケーション手段、コミュニティーで新規獲得を目指す昨今の取り組みには、CRMの考え方が重要になっているといえるのではないだろうか。