2020.05.03

リアルイベントとEC

コロナ禍の今、演劇などの興行を行う事業者は壊滅的な打撃を受けています。私の自宅の近くにはライブハウスや小劇場が多くありますが、そのほとんどが一時閉鎖に追い込まれ、興行主・施設側ともに収入源を絶たれている現状です。学生時代から演劇に関わってきた身としては、今回の非常事態により、こうした文化が損なわれてしまうのではないかと気が気ではありません。

ポップカルチャーの情報を配信する大手ウェブメディア「ナタリー」は4月27日、中止や延期を余儀なくされたライブや公演のグッズを販売する特設ページをオープンしました。もちろん苦境に追い込まれている劇団への支援のためです。ナタリー側は最低限の手数料のみを受け取り、収益のほとんどは当事者に還元されるといいます。

私はこうした公演グッズとECの相性はあまり良くないと考えていました。こうしたグッズの購入は劇場での体験の延長線上にあるもので、現場で購入することに価値があるものだと感じていたからです。現に私の部屋には、劇場での興奮に背中を押され購入したものの、たんすの肥やしになっているTシャツが無数にあります。

しかし、そんな価値観は自己満足であり何の役にも立たないことを、この非常事態下で現場の声を聞き痛感しました。当然のようにあると構えていた、好きな劇団やバンドの次回公演に立ち会うためにも、ファンとしての意思を目に見える形で表明しなければならないのかなと考えています。現状その表明手段として最適なのは、彼らのアイデンティティーである、リアルでの表現と対極に位置する「EC」なのかもしれません。

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