2022.07.06

【緩和進むアプリの決済】アプリ事業者「手数料は負担 幅広い決済手段を提供したい」 政府の規制緩和の可能性も

AppleとGoogleはアプリ事業者に15~30%の高い手数料を課している

スマホゲームやマンガ、音楽のアプリなどのデジタルコンテンツが、より自由な価格や決済手段で提供できるようになる可能性がある。現在、デジタルコンテンツについて、アプリ内で決済をする場合、決済手段は、GoogleやAppleが提供するものに限定されている。AppleとGoogleがアプリ内決済に課している手数料が、15~30%で固定されていることも、各国で問題視され始めている。

Appleは3月、デジタルコンテンツ(以下デジコン)のアプリ内課金について、外部サイトでも決済ができるよう、仕組みを一部緩和した。政府は4月、専門家会議の中で、デジタルプラットフォームのアプリ内決済の問題点について言及。今後、政府が主導する形で、アプリ内課金について何らかの制度改正を進める可能性もありそうだ。デジコンアプリを提供する事業者からは、「プラットフォームの決済手段や手数料は負担だ。決済手段が選べれば、クレジットカード決済やスマホ決済を導入して利用者の選択肢を広げたい」(BookLive)といった声も聞かれる。
 

手数料は年間5000億円にも


アプリ内で、スマホゲームやマンガ、音楽、動画などのデジタルコンテンツを購入する際の決済手段は現状、アプリストアを運営するGoogleとAppleの2社が提供するものに限られている。例えば、アプリストア「Google Play」でダウンロードしたアプリで、ゲームや音楽、動画、出会い、教育などに関する定期購入サービスを利用する場合、「Google Play」の課金システムを利用して決済を行う必要がある。Appleも同様だ。

プラットフォーマーは、物理的な商品とデジタルとで扱いを分けており、アプリで洋服や化粧品などの物理的な商品を購入する場合は、プラットフォーム以外の事業者が提供する決済を自由に選択できる。これに対してデジコンについては決済手段が限定されている。

Googleのアプリ内課金の決済システムの手数料は、年間売上高が100万ドルまでの事業者は15%、100万ドルを超える場合は30%となっている。Appleは、前年の売上高が100万ドル以内の小規模なデベロッパの手数料は15%、それ以外は30%としている。

政府のデジタル市場会議がまとめた資料では、20年のモバイルコンテンツの市場規模は、2兆6000億円超となっている。そのうち15~30%にあたる3900億~7800億円を、GoogleとAppleが手数料として徴収していると考えられる。

欧米各国や韓国では、こうしたプラットフォームによる市場の寡占が問題視され始めており、さまざまな訴訟が提起されたり、改善命令が出されるようになっている。
 

Appleが一部規制を緩和


Appleは3月、一部のデジタルコンテンツの決済をアプリ外のサイトでできるよう、規制を緩和した。4月には、政府のデジタル市場競争会議が、GoogleやAppleが義務化しているアプリ内課金システムについて取り上げた。外部の決済事業者の参入を阻害している点や、手数料の水準が高いことについても言及。今後、政府の議論の方向性によっては、GoogleやAppleに対して、規制緩和を求める仕組みが作られる可能性もある。
 

「ユーザーのために決済手段を多様化したい」の声も


マンガやスマホゲームなどのアプリの提供事業者からは、「アプリ内決済の手段を選べないのは負担だ」「プラットフォームの手数料は負担だ」といった声も聞こえてくる。「決済手段を自由に選べるようになれば、スマホ決済・キャリア決済など、手数料の低い決済手段を導入したい」(恋愛ゲームアプリ企業)といった声が挙がっている。「ユーザーの利便性を高めるためにも、多くの決済手段を導入したい」(音楽アプリベンダー)といった意見もあった。

手数料については、「手数料が今よりも安くなれば、浮いた予算を新規ユーザーの獲得に投資したい」(スマホゲーム企業)といった声や、「現在は利益が低くてラインアップできないコンテンツを、増やしたい」(マンガアプリ企業)といった声も聞かれた。

マンガアプリを提供するBookLiveでは、同社が提供する総合電子書籍ストア「ブックライブ」のAndroidアプリについて、3月末に、ブラウザのページからの公式配布方式に切り替えたという。Googleが、Googleの提供する決済手段以外の決済を禁止しているため、提供手段を変更したという。

デジタルコンテンツの提供企業においては、コンテンツの充実や、決済手段の利便性向上を目的に、アプリから脱却し、ブラウザでのサービス提供を開始する企業も出てきている。

デジタルコンテンツの決済に詳しい、DGフィナンシャルテクノロジーの篠寛社長は、Appleが3月に実施した規制緩和に注目しているという。

Appleが、アプリ内に外部サイトへのリンクを設置できるようにしたことから、コンテンツの購入の決済をアプリ外で行えるようになった。外部サイトでの決済のプロセスを簡略化できれば、利用者に対して、よりスピーディーに、さまざまな決済手段で、商品を提供することもできるようになるという。決済手段によっては、手数料を5%以下にすることもできるとしている。手数料の減少分を、コンテンツの料金の値下げや、ポイントバックの形で利用者に還元することも可能だという。

「AppleやGoogleの決済手段は、アプリの画面上で決済できるという利点がある。顔認証の仕組みなども備えており、シームレスに購入できる。一方、アプリ外決済は、それよりもプロセスは多くなるものの、最適な手段を選べば、ユーザーにとっても事業者にとっても、利用するメリットは大きい」(篠社長)と話している。

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