全国に実店舗網を持つ大手小売りチェーンが、ECサイトで購入した商品を店舗受け取りできるようにする施策は、もはや“当たり前”になってきた。大手小売りチェーンは店舗受け取りのために専用カウンターを設けたり、スーパーマーケットなどは専用のピックアップカウンターを設けたりしている。店舗受け取りの利便性を高める取り組みは進んでいるが、店舗受け取りの体験価値を高める伸びしろは、まだまだありそうだ。店舗受け取りを“便利”から“楽しい”に変えることができれば、もっと顧客は能動的に店舗受け取りを活用するだろう。
宅配全廃決めたワークマンの狙い
大手小売りチェーンが店舗受け取りを促進する理由は、小売店側にも購入者側にもメリットがある施策だからだ。
購入者としては、店舗受け取りを選択すると送料が無料になるため、“買いやすさ”が高まる。小売店側は実店舗に送客することで、新たな“販売機会創出”を期待できる。
ワークマンは5年以内に、ECにおける宅配を全廃し、店舗受け取りをより促進する方針を明らかにしている。すでに、EC注文の約8割が店舗受け取りを選択していることが、今回の方針決定を後押ししたのだろう。
▲ワークマンはEC注文の約8割が店舗受け取り同社はフランチャイズ(FC)チェーンであり、全国の店舗は加盟店が運営している。ECで本部の直販を推進すると、FC加盟店との利益相反にもなってしまうジレンマがあった。ECの受け取りチャネルを店舗に限定することでその課題は解消する。
さらに、ワークマンは新しいカテゴリーの商品開発を強化している。「ワークマン女子」に代表されるような女性顧客を狙ったアイテムもあれば、今年に入りキャンプラインの展開も本格化している。
商品の幅を拡張するにあたり、実店舗の限られたスペースで販売する限界も見えていた。店舗受け取りを進めることで、実店舗とECサイトの連携が深まり、実店舗の売り場をECサイト上に拡張することができる。