2023.11.27

在庫分析クラウドのフルカイテン、合計11.6億円の資金調達が終了 2024年に新サービスを予定

在庫分析クラウド「FULL KAITEN」を展開するフルカイテンは11月27日、日本政策金融公庫から、スタートアップ支援資金の新株予約権付融資によって3.5億円の資金調達を実施した。今回の調達は、2023年6月までに実施したジャフコ グループをリードインベスターとした総額8.1億円の第三者割当増資に関連するものとなる。調達した資金を元に事業拡大を加速し、大量生産・大量廃棄社会の適量生産・適量消費社会への変革を目指す。新たなプロダクト開発や人材採用に活用する。

フルカイテンの提供する「FULL KAITEN」は、在庫効率を向上させるための在庫分析機能をクラウドサービス。AIと統計を用いて、販売の機会損失と余剰在庫の発生を同時に防ぐことができ、、売価をいくらにすると売上が最大化するか、粗利が最大化するか、販売数量が最大になるかといった売価のコントロールや、売れる商品を売れる店舗に売れる数量配分する在庫移動、店舗ごとの適正在庫の予測などを機能として提供し、アパレルや雑貨、スポーツ用品、メガネ、靴、食品など様々な企業で導入されている。



このほど、日本政策金融公庫から、スタートアップ支援資金の新株予約権付融資によって3.5億円の資金調達を実施した。今回の調達は、「FULL KAITEN」の開発・提供を通じて「世界の大量廃棄問題を解決する」というミッションの実現のため、2023年6月までに実施したジャフコ グループをリードインベスターとして実施した総額8.1億円の第三者割当増資に関連するもので、合計11.6憶円を調達した。これによりフルカイテンの累計資金調達額は23億円となった。

調達した資金を活用し、プロダクト開発と採用強化を実施する。具体的には、売価のシミュレーションを可能にする「価格弾力性」、店舗ごとの基準在庫を予測可能にする「補充発注」、卸、商社、メーカーの営業向け新サービスの開発を行う。

既存の「FULL KAITEN〈在庫分析〉」では、値引きの際に「一律〇%値引き」ではなく、傾斜をつけた値引き率の設定が可能だが、具体的に「どれくらい値引きをするとどれくらい売れそうか」という価格弾力性までは価値を提供できていなかった。現在、価格弾力性の研究を終え、売上向上、粗利向上、消化促進などの目的別で、最適な価格設定をレポートサービスとして提案する準備を進めている。

「補充発注」は、店舗ごとの適正在庫をSKUレベルで予測するサービスで、家電量販店、雑貨、コスメなどで好評を得ている。店舗ごとに各SKUの基準在庫を予測し、現在庫や発注残までを考慮して仕入れ数量を決めるのは人力では困難な業務だ。そのため「いくつ売れたら、いくつ仕入れる」という固定発注点方式の発注を行う企業が多いが、固定発注点方式には欠品リスクと残在庫リスクが残るという欠点がある。「補充発注」では、AIが「店舗 × SKU」の単位で発注点を変動させるため、欠品リスクと残在庫リスクの低い仕入れが可能になり、欠品率の低減と在庫回転率の向上を見込むことができる。

卸・商社・メーカーは、数万単位のSKUを抱えているが、取引先企業はその全てのSKUを取り扱うわけではないとし、卸、商社、メーカーの営業向け新サービスでは、まだ取引先企業が取り扱っていない商品の中から、どの商品を取り扱う可能性が高いかを予測。そのため卸・商社・メーカーの営業担当者は、自分の取引先で取扱実績のない商品を効率よく提案できるようになる。現在、卸企業とPoCを実施しており、早ければ2024年にも本格的にサービスをローンチする予定としている。

これらの短期的な開発と同時に「FULL KAITEN」は、約9500億円におよぶ導入企業の販売データを毎日蓄積している。販売データの量では大手EC事業者などには敵わないが、自社の強みは導入企業の全販売チャネルの在庫データを預かっている点にあるとした。このような強みを生かして、サプライチェーンの川下に位置する小売だけでなく、川中(卸売、商社、メーカー)へ遡って余剰在庫の問題を解決できるよう、サプライチェーンの川下と川中に散在する販売・生産・在庫に関するデータを集約するためのプロダクト開発を本格化する。これらを実現するために、2024年末には70名規模の組織体制まで人材採用を進めていくとしている。


▲フルカイテン 代表取締役CEO 瀬川直寛氏

フルカイテン 代表取締役CEO 瀬川直寛氏は、「ちょうど1年かかった資金調達活動がこれで完了になります。スタートアップにとって逆風な市場環境での資金調達でしたので、本当に苦しかったというのが率直な感想です。そのような中で、最後の最後に日本政策金融公庫様から3億5000万円もの融資を受けることができました。政府系金融機関からのこの与信には、弊社事業の成長性だけではなく事業の社会性に対する期待も持って頂けたのだと理解しています。今回の資金を上手に使い、在庫ビジネスのインフラとなるための重要な一年を過ごしていきます。まずは最大のボトルネックである採用を強化します。フルカイテンのこれからにご期待ください」とコメントした。





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