2023.08.08

【中国格安ECアプリ「Temu」の脅威】GMV1.4兆円超の観測も 友だち招待、ゲーム性でシェア拡大か


中国発の格安ECアプリ「Temu(ティームー)」が今年7月、日本に上陸し、話題を集めている。圧倒的な低価格が売りで、「最大90%OFF」「送料無料」などのキャンペーンを展開し、日本でも利用者を獲得しようとしている。米国では2022年秋から事業を開始し、アプリのダウンロード数が1位になるなど、人気を集めている。すでに20カ国・地域に展開しており、2023年の流通総額(GMV)はグローバルで100億ドル(1兆4200億円)に達するという見通しもある。世界中を席巻(せっけん)する「Temu」の国内事業者への影響について識者に聞いた。


圧倒的な低価格


「Lenovoのヘッドフォンが96%OFFで270円」「新規ユーザー限定でバックパック383円(送料無料)」など、一度、「Temu」のアプリを利用すると、目を疑うような広告が表示される。


▲広告で大幅割引をアピールしアプリへ誘導

日本進出のオープニングキャンペーンでの大幅な割引もあるだろうが、「Temu」は信じられないような価格で大量の商品を販売している。

初めて目にしたユーザーには、「またいかがわしいECサイトが出てきたな」と思われるかもしれないが、「Temu」を展開しているPDDホールディングスは、中国でもアリババグル―プや京東グループに次ぐ、大手EC事業者だ。

PDDホールディングスは中国で飛躍的に成長したECサイト「拼多多(ピンドゥオドゥオ)」を展開している。海外展開に当たり、「Temu」というサービスブランを立ち上げ、資本力を武器に海外市場でシェアを獲得するべく、強力な価格攻勢を仕掛けているのだ。

米国では、今年2月に開催された、全米が注目するNFLの優勝決定戦「スーパーボウル」の中継にCMを放送し、「Shop Like A Billionaire(億万長者のように買い物しよう)」というコピーでサービスの認知を高めた。アプリは今年3月までに、5000万ダウンロードを突破し、米国で1位になったという。


ゲーム性で購買促進


「Temu」はアパレルを中心にグローバル展開する「SHEIN(シーイン)」のように、かなりのスピードで成長するとみられている。「Temu」の方が取扱商材の幅が広く、多くの国内事業者にとっても脅威になる可能性は大きい。

実際に「Temu」を利用した日本ECサービスの清水将平代表は、「会員登録などSNSと連携しており、よくできている。『SHEIN』同様に、ゲーム性も取り入れて、さらにサービスが強化されるかもしれない」と感想を述べる。

海外ECに詳しいワサビの大久保裕史代表は、「ルーレットで割引を提示したり、限定クーポンを表示したり、その度に電話番号や住所などの登録を促す仕組みがすごいです。データを登録させることで購入につなげたり、アプリへの再来訪を促したりしているようだ」と分析する。


▲ルーレットで割引を訴求

中国ECに詳しく、「拼多多」を参考に国内でシェア買いアプリ「カウシェ」を立ち上げたカウシェの門奈剣平代表は、「『Temu』を触っていると、友だちの招待を促すの導線が多く、ネットゲーミフィケーションでサービスが拡散されていくことを意識していると思う」と話す。

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