2021.12.13

ペイパル、「中小企業によるEコマース活用実態調査」を発表 消費行動の変化や越境ECへの意欲が明らかに

ペイパルは12月9日、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大が中小企業に与えた影響、今後の見通し、ECの活用状況などについて調べた「ペイパル 中小企業によるEコマース活用実態調査」の結果を発表した。新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、日本の中小企業に深刻な影響を及ぼしたが、ECを行っている約1/3の中小企業が「ビジネスへの影響はない、または、プラスの影響があった」と回答していることなどがわかった。コロナ禍にあってもビジネスの成長を模索する中小企業の努力や、消費者行動の変化などが背景にあったとしている。

「ペイパル 中小企業によるEコマース活用実態調査」は、日本全国のECを行っている中小企業における意思決定者(310名)を対象に、2021年9月~10月にかけてオンラインで実施したもの。調査結果から、信頼性の高いECおよびデジタル決済プラットフォームのサポートを受けることによる越境ECの検討、ECモールや自社プラットフォームを引き続き活用するとともに、費用対効果の高いソーシャルメディアチャネルも活用したマルチチャネルによるECの実施、 国内販売、海外販売ともにデジタル化を進めることがポイントになるとの見解を示した。

今回調査した中小企業では、64%がコロナ禍においてマイナスの影響を受けたと回答した。一方で、3社に1社以上(36%)がパンデミックによって「ビジネスへの影響はなかった、あるいはプラスの影響を受けた」と回答。これについてペイパルは、調査対象企業の8割近く(78%)が、コロナ禍においてオフラインやオンラインのさまざまな手段を使ってビジネスを成長させる方法を積極的に模索した結果と言えるとした。今回の調査では、24%の企業が営業時間の調整を行い、さらにBtoBからBtoCへ、またはその逆へとビジネスモデルを切り替えた企業も18%に上った。

消費者の行動変化について尋ねた問いでは、78%の企業がパンデミックが日本の消費者の行動に変化をもたらしたと考えていることがわかった。38%が日本の消費者の多くがECにおける行動が変化したとし、27%が様々な決済方法を利用することに前向きになったと回答している。また、77%の企業がECの利用者に変化がみられたと回答した。変化の内容は、「国内の顧客数」が46%、「既存客からの支出」が41%、「リピート率」が33%、「顧客の年齢」が31%となった。「既存客からの支出」と回答した41%の内訳は、「減少した」(26%)が「増加した」(15%)を上回った。一方「リピート率」と回答した33%の内訳は、「増加した」(21%)が「減少した」(12%)を上回っており、これらはECにおいて顧客のロイヤルティを高めることの重要性を示しているとした。「顧客の年齢」が変化したと回答した31%の内、シニア世代によるオンラインショッピング利用の増加が19%を占め、オンラインビジネスを拡大しようとする企業にとって、潜在的なホワイトスペースとなっていることがわかったとしている。



日本の中小企業が現在利用しているECの販売チャネルを尋ねた問いでは、1位が41%で「ECモール(Amazon、楽天、Yahooなど)」、2位が36%で「自社のECサイト」、3位が26%で「自社のプラットフォーム(公式アプリなどECサイト以外のチャネル)」となった。ソーシャルメディアは18%、ショッピングカート企業(Shopify、BASE、STORESなど)は17%、と導入率が低いことがわかった。自社のECチャネルで販売することは、ブランドの構築、ロイヤリティの育成、ユーザーエクスペリエンスのコントロールなど多くのメリットがある。反面、自社のECチャネルの開発にはコストや時間がかかり、技術的な知識が必要となるが、ショッピングカート企業などを利用することで、リソースの少ない中小企業でも、簡単かつ低コストでエンド・ツー・エンドのオンライン・ショッピング・エクスペリエンスを実現することができる。

ソーシャルメディアを利用したECは18%と日本ではそれほど普及していないが、海外では普及が進んでいる。そのため日本の中小企業が海外で自社製品を宣伝・販売しようとする場合、ソーシャルメディアを新たな顧客層を獲得するためのプラットフォームとして検討することができる。さらにペイパルなどの決済プラットフォームを利用することで、ソーシャルメディアでの投稿を販売窓口として、消費者へ直接販売することも可能としている。

越境ECについて尋ねた問いでは、すでに越境ECに取り組んでいるが28%、計画しているが16%となり、合わせて半数近く(45%)の企業が越境ECに意欲的なことがわかった。すでに導入していると答えた中小企業のうち、4割近く(39%)がコロナ禍に導入しており、パンデミックがビジネスに与えた影響が調査にも反映された結果となった。新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により、ECは「便利なサービス」から「欠かせないサービス」へと進化しており、日本の中小企業においても越境ECに取り組む意欲が高まっているとした。



一方で、今後1年間において越境ECを計画いないと回答した企業は、コストの高さ(35%)や人手不足(27%)などを懸念していることがわかったが、ショッピングカート企業、代理購入サービス、グローバルな決済システムや配送業者との提携など、越境ECに強いパートナーと組むことで導入しやすくなるとしている。

今後のビジネスにおける優先事項やデジタル化への取り組みについて尋ねたところ、日本の中小企業は、ータ管理やセキュリティを重要視していることわかった。優先順位が高かったのは、「社内データのより効果的な活用方法の取得」(26%)、「IT/技術システムのセキュリティを確保」(21%)、「新しいデジタル技術を導入することによる顧客体験の改善」(20%)だった。現在取り組んでいる、もしくは今後12カ月に予定しているデジタル化への対応については、「顧客データの管理」(77%)、「オンラインでの商談・営業」(77%)、「情報セキュリティ(74%)が多くの回答を得た。また、デジタル化をサポートするための最も重要な要素として、「技術的な知識や専門性を求めている」(63%)こともわかった。

今回の調査結果に関して、ペイパル日本事業統括責任者のピーター・ケネバン氏は、「パンデミックが人々の消費行動を変え、ECの今後一層の成長が見込まれる中、今回の調査では日本の中小企業の皆様が越境ECを一つの選択肢として検討していることが分かりました。2022年に事業者がビジネス成長を加速させるうえで海外販売を開拓・拡大することも重要になってくると思われます」とコメントした。

中小企業は、世界中の膨大なECの機会をとらえることで、さらなるビジネスの成長を見込むことができるとし、今後より多くの日本の中小企業が越境ECの世界に進出するためには、ペイパルなどの決済パートナー、ECプラットフォーム、ソーシャルメディアなどを含む外部のサポートを検討することがカギとなるとしている。



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