2024.09.24

【デジタルとリアルの融合 <第3回>】進化するオムニチャネルマーケティングの世界 次世代小売戦略の実践ガイド

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現在の小売ビジネスのマーケット環境においては、デジタルコマースとリアル店舗の連携がますます重要になってきている。それは、デジタルでの顧客体験を「温かみ」のあるものに再構築しつつ、リアル店舗での顧客接点につなげることが求められているからだ。これにより、ブランドの信頼性と顧客ロイヤルティーを高めることができるからである。そのための施策のポイントや成功事例について、富士ロジテックホールディングスの吉村典也氏が、エスキュービズム取締役の梅木研二氏と、シナブル執行役員の曽川雅史氏に聞いていく。第3回は梅木氏と曽川氏に、オムニチャネルマーケティングと、次世代の小売り戦略について話してもらう。



吉村:ID-POSとマーケティングオートメーションを組み合わせることにより、どのような形で、より効率的で効果的なマーケティングが可能になるのでしょうか。

梅木 :顧客のニーズや関心により的確に応えることができるようになります。

例えば、顧客には次のようなニーズがあります。

・ECから店舗の在庫を確認したい

・ECで購入した商品を、近くの店舗で受け取りたい

・ECで見つけた商品を、店舗で試着してから購入したい。試着する日時を予約したい

・店舗で購入した商品を、そのまま自宅配送してほしい

ID-POSシステムでは、接客履歴やECサイトでの商品の閲覧履歴、過去の購入履歴、リワードポイント履歴など、すべての情報を統合し、店舗担当者もECサイト担当者も分け隔てなく参照できる状態を構築することが必要です


小売りでは、F2転換が一番の課題に


梅木
: 顧客とのタッチポイントを、リアルからデジタルに誘導すると、ブランドスイッチやチャネルスイッチが起きやすくなります。
だからこそ、「商品カタログ機能」「カートシステム」という利便性だけではありません。データを活用したマーケティングオートメーションを活用したコミュニケーションフックや、リアル店舗への誘導施策が、ますます重要になっています。

ロイヤリティープログラムを再設計することが重要なのです。

リアル店舗でよくある、単なる購入履歴などから判断した値引き提案のプログラムでは、顧客はメリットも感じないし、感動してくれません。[a]

デジタルと組み合わせることで、ウェブサイトの行動履歴や、顧客情報と、ロイヤリティープログラムメンバーのSNS情報などの、多様なデータが収集されます。

これらのデータをベースにして、分析・活用することで、ロイヤリティープログラムを設計して、購入につながるアクティビティーをしやすいようにします。たまらないポイントや使えないポイントがほしい顧客はいないのです。

顧客に対してよりパーソナライズされたサービスを提供したり、リアル店舗への訪問を促したりすることにより、「温かい」コミュニケーションを醸成できます。ロイヤルカスタマー化が可能になっていきます。

曽川 :例えば、多くのブランドは、セール期間の緊急性を高めるために、最後の数時間にカウントダウンタイマーなどを追加して、メールを送ります。

しかし、この施策はあまりにも一般的になり、消費者によく知られるようになったため、大きな成果が得られないことがあります。

購入前体験に視点を移せば、セール開始までのカウントダウンタイマーを巧みに導入すると、3 日以内に在庫の 90% が売り切れる事例もあります。それは、販売セールへの不安ではなく、販売セールの盛り上がりを生み出していく方法です。


1:ひとびとに期待値と注目を


それはセール期間の正確な日時を示します。

まずアプリで独占販売を行い、次にウェブサイト、そして小売店で独占販売を行う

という方法で、巧みに販売の波を作り出します。

2:先行公開
設定された期間内に、どの商品が割引されるかをユーザーが先行公開で確認できるようにします。

顧客にとっての、コスト削減を、レッドやグリーンなどでの色合いで強調します。多くの商品詳細ページの画像の白い背景に対して目立ち、視覚的にインパクトがあるようにします。

3:カートへの詰め込み
ユーザーは欲しいものをすべてカートに追加してもらいます。セール開始時に予想される割引額を確認できるとともに購入意図データを取得できます。これはWISHリスト(お気に入り)では実現できません。どれだけ安くできるかを知ることは、顧客にとって購入を実行する大きな動機にもなります。

4:待ち時間を楽しく
注文前までお客さまとのコミュニケーションを維持します。買い物客がサイトを忘れないように、注意を引き続けます。リアル店舗のBOPIS(ウェブで購入した商品をリアル店舗で受け取れる仕組み)に誘導することで、その商品を確保できるなら、買い物客の関心と購入実行を維持することもできます。


お気付きのとおり、これら 四つの簡単なステップは、大幅に値引きされた限定商品を手に入れるために、人々が店の外に何時間も列を作る、サンプルセールの対面販売での顧客行動を模倣したものです。

吉村:パーソナライズされたコンテンツやクーポンやキャンペーンの配信のポイントと事例を教えてください。

曽川 :例えば、ECサイトで予約商品を閲覧しているロイヤル顧客には、その商品をリアル店舗で優先販売するオファー(特別なクーポンやセール)の案内を展開します。

あまりロイヤルティーの高くない顧客に対しては、カートインや商品閲覧、お気に入りなど顧客の行動に合わせて、商品ごとのパーソナライズされた割引販売クーポンなどを送ります。商品購入点数の増加などによる「トータル消化率(定価販売と割引販売を含めた在庫消費率)」の向上が実現できます。

マーケティングオートメーションを活用したクーポン配信は、顧客IDにひも付いたユニークなものになります。そのおかげで、SNSでの拡散・利用を防ぐことができます。SNSでの拡散を期待するクーポンは、メンバー登録条件をつけるようにします。

店頭では、クーポンを店舗スタッフに提示して、店舗スタッフがクリックし、顧客IDとひも付いた、2次元バーコードやQRでID-POS読み込みできるようにします。利用判定と適用確定ができるようにします。

購入履歴とSNSの投稿情報などに基づき、AIを活用して、顧客が購入している商品と相性の良い新商品を紹介することで、再度もしくは、はじめて店舗へ訪れる動機づけを行うことも効果的な施策です。


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