2024.03.27

【「EC-CUBE」反撃ののろし】岩田社長と恩蔵CMOに「体制」「ソリューション」の進化を聞いた

イーシーキューブの執行役員CMO マーケティング本部 本部長 兼 営業本部CCO 恩蔵優氏(左)、代表取締役社長 岩田進氏(右)


「ベンダーロックイン」されない価値を提供


――カスタマイズに対応している他社のEC構築ソリューションとの違いは?

岩田:一番分かりやすい点はソースコードがオープンである点だ。他のソリューションはベンダーロックイン(ソフトウエアの機能改修やバージョンアップなど、 導入したベンダー以外が実施できず、既存のベンダーを利用し続けないといけない状態になること)されるような状況になってしまう。企業が本格的にECビジネスをやろうとしている中では、うまくいかない部分が生じたり、スピード感やコストの面の課題があったりするだろう。

「EC-CUBE」はソースコードごとお客さまに納品している。そのため、本格的にECビジネスを行おうとしている企業であれば、今は難しくても、今後、エンジニアも採用しながら、一部は内製化できる状況を作ることもできる。ベンダーロックインされない状況を作っておくということは、経営上のリスクヘッジにおいても重要だ。それは大企業になればなるほど重要な要素になる。フルスクラッチで構築する選択肢もあるが、それよりは圧倒的に手軽でコストも抑えることができる。ソースコードを自社の知財として保有できることも、1つの大きなメリットだといえる。

恩蔵:あえて言うが、私は「競合はいない」と考えている。ECの基盤を作り、それを無料で公開しているのは当社だけといっても過言ではない。始めに聞いた時はまるでNPO法人のようだなと思った。中の人になり、改めてそこがすごいと感じている。

さらにすごいと思ったのが、コミュニティーの存在だ。「EC-CUBE」は、かなりパートナーや事業者から愛されている。われわれが知らないところでも、勉強会や開発合宿が全国各地で行われている。製品を良くするためのご連絡も毎日のようにいただいている。こんなに応援されている会社は他に見たことがない。

コミュニティーをさらに盛り上げるために、私たちも積極的に関わるようになった。この1年間でセミナーやイベントを昨対比8倍くらい実施している。ベンダー主催のイベントと、パートナーや事業者が独自にやるイベントがそれぞれ盛り上がることで、コミュニティーの活性化において相乗効果を発揮できると思う。

SaaSを含む他社サービスとは競争ではなく共創がこれからの世界。敵ではなく戦友。お互い得意分野で協力し成長しながら日本のEC市場を共に拡大させていく必要があると強く感じている。


グループ力も強み、将来的な海外展開も視野


――「AD EBiS」などグループで多様なソリューションを提供していることも強みになるのか?

岩田:ECサイトの構築だけを支援できる体制では弱いと思っている。ECビジネスをどう伸ばしていくかを語れるビジネスパートナーにならなければならない。今までの業界環境としては、「構築だけ」「マーケティングだけ」といった縦割りのベンダー体制になりがちだった。われわれはワンストップで支援できる体制が絶対的に必要だと思っている。

構築から運用、マーケティングといった流れは、一連のECビジネスなので、そこはシームレスに動いていかないと、使い勝手が悪く、足並みがそろわない状況になってしまう。ソリューションをワンストップで提供できることで、「売り上げ向上のために、今はこれをやるべきだ。そのためにシステム側はこう変わるべき」というように一体的に支援できる。ECビジネスのパートナーとして、本当にワンストップでしっかり支援できるベンダーは意外と少ないと思っている。そのポジションのリーダーをわれわれが担っていきたい。

――恩蔵氏は一般社団法人 日本越境EC協会の代表理事も務めているが、海外展開も視野に入れているのか?

恩蔵:当初はそこまで思案していなく、国内の成長に尽力することが先決の認識があった。ただこの1年で取り巻く環境が変わりつつある。「EC-CUBE」はこれまで、越境ECに対応してこなかったので、そういう意味で今後のポテンシャルは大きい。とはいえ越境はクリアしなくてはいけないハードルがいくつかある。何をやるべきか、何から着手するかは慎重に考えないといけない。

われわれ自身が海外進出する構想も個人的には持っている。世界的に見ても本格的に提供しているオープンソースのECソリューションは数えるほどしかない。まずは海外にある日本の事業者に活用していただくところから始めたい。そこから日本初のEC基幹システムとして広まっていけたら、面白い世界が待っていると思う。







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