2023.07.31

オルビス、機械学習でEC梱包サイズを最適化 DATAFLUCTと共同開発、実証実験で注文の約15%をサイズダウン

オルビスはこのほど、データサイエンスで企業と社会の課題を解決するDATAFLUCTと、EC発送時の梱包サイズを最小化する機械学習モデルを共同開発し、実証実験において注文の15%でサイズダウンを実現した。2023年度中にオルビスのEC発想を行う全拠点での本格導入を目指す。

オルビスとDATAFLUCTは共同で、EC発送時の梱包サイズを最小化する機械学習モデル開発した。DATAFLUCTの機械学習サービス「Perswell」とデータプラットフォーム「AirLake」を組み合わせ、オルビスの商品データ・出荷データ・梱包材の価格データをもとに機械学習で最適な梱包材のサイズを算出する。

外部データも活用した予測が可能な「Perswell」と、社内外のあらゆる形式のデータを扱いやすくする「AirLake」を組み合わせたソリューションは、本取り組みのようなサプライチェーンマネジメント領域の課題解決を得意としている。



アパレル商品の折り畳みや、袋の中の空気を抜くなどの対応は、人間であれば「梱包時に容易に取り入れられるサイズダウンの方法」だが、一般的に発表されている論文や、実装されている箱詰めのアルゴリズムでは考慮されていない。そこで本取り組みでは、オルビスのEC商品特性を考慮し、こうした実践可能なサイズダウンの方法を含むモデルを作成することで、梱包サイズの最小化を実現した。

実証実験においては、オルビスの物流拠点で本システムを活用して梱包業務を行い、注文のうち14.96%で従来の方法で算出した梱包サイズよりも小さいサイズで発送することに成功した。

実証実験では、梱包担当者の手元のディスプレイに梱包サイズの情報を表示し、作業をサポートした。本格導入の環境では「Perswell」で算出した最適な梱包サイズを表示し、より精度の高い情報を担当者に共有する。さまざまなサイズが用意された梱包材から、迷うことなく最適サイズを選ぶことができ、熟練度に左右されず全ての担当者が効率的に作業することができる。



ライフスタイルの変化などからEC市場が拡大する一方で、エネルギー価格や原材料価格の上昇、労働力減少により、物流コストは今後も高騰が見込まれている。オルビスは、通販向け出荷ラインにAGV(無人搬送ロボット)、直営店舗・BtoB向け出荷ラインに重量計を搭載した最新のAMR(自律走行搬送ロボット)を導入するなど、テクノロジーの積極活用により物流システムの自動化、省人化を促進。環境負荷と物流現場の負担を軽減するとともに、物流基盤を持続可能な形で強化している。


▲自動化が進むオルビスの物流拠点

さらなる効率化を目指す中で、実現可能性がある施策として「梱包のサイズダウン」着目した。これまでオルビスでは、現場の熟練担当者の判断や商品サイズから梱包サイズを決定しており、必要なサイズよりも大きな梱包材を使い、余分な配送費が発生するケースがあった。

そこでオルビスとDATAFLUCTは、商品が破損しない範囲で梱包を最小サイズにして配送コストを削減することを目指し、2023年2月から6月にかけて機械学習による梱包サイズ最適化の実証実験に至ったとしている。

今後は、2023年度中にオルビスの国内全てのEC発送時に本システムを活用することを目指し、配送コストの削減と担当者の負担軽減を図る。エネルギー価格や原材料価格の上昇、労働力減少により物流コストが高騰する状況下でも、データ活用によるEC事業の成長を目指す。

さらにDATAFLUCTは、2022年4月よりポーラ・オルビスホールディングスとの事業連携も進めており、ポーラ・オルビスホールディングス内のあらゆる業務を最適化するため、今後も両者の知見と技術で共創に取り組むとしている。

今回の取り組みにあたり、オルビス SCM部 ロジスティクス管理グループ グループマネジャーの柳田和宏氏は、「2024年問題を筆頭に物流を取り巻く環境は厳しく、荷主としては配送費が上がることへの対応とドライバーの方の負担を軽減し、出荷の安定を図ることが求められています。その1つの対応策としてより小さいサイズでお荷物を配送できれば、配送費の削減もでき、輸送効率向上も図れるのではと考え、実現方法を検討してきました。そこで得られた着想がデータサイエンスに強い会社と組んで出荷判定ロジックを見直すことでした。DATAFLUCT社はデータサイエンスだけでなく、物流業務にも詳しく、また机上ではなく現場での活用を重視されているので理想的なパートナーです」と述べた。

ポーラ・オルビスホールディングス 取締役 小川浩二氏は、「ポーラ・オルビスHDは、グループのデータ取得・保管・活用の更なる発展を目指し、DATAFLUCT社との事業提携を2022年から本格的に開始しました。これまで機械学習を用いたデータ活用の実証実験を複数実施し、業務理解の深さおよび課題を解決する技術力、そして現場と伴走する力を高く評価しています。DATAFLUCT社は当社にとって信頼できる協業パートナーであり、今後も更なる価値創出に向けた取り組みを期待しています」とコメントした。




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