2023.06.10

三陽商会、無在庫ビジネス構想に参画 アパレル3Dソリューションを活用した実証実験

試作品レス、在庫レスを実現する アパレルシミュレーションソフト

三陽商会はこのほど、サステナブルファッションブランド「ECOALF(エコアルフ)」において、エプソンがアベイルと進める「アパレル3Dソリューション×無在庫ビジネス構想」に参画し、3社での共創活動を開始した。3社による実証実験として、6月14日より開催されるSDGsポップアップ・イベント「GOOD VIBE FROM SEA」の「ECOALF」が演出する会場にて、タブレット端末でのバーチャルフィッティング体験でオーダーできる商品の販売を開始する。持続可能なファッションの流通サイクルの推進を目指す。

三陽商会が展開する「ECOALF」は、次の世代に残すべき世界について考え、2009年にスペインで立ち上げられたサステナブルファッションブランド。「Because there is no planet B」(第2の地球はないのだから)をスローガンに、すべてのアイテムを再生素材や環境負荷の低い天然素材のみで製造・販売している。

このほど「ECOALF」はエプソンがアベイルと進める「アパレル3Dソリューション×無在庫ビジネス構想」に参画し、3社での共創活動を開始した。

「アパレル3Dソリューション×無在庫ビジネス構想」は、エプソンがビジネスオーナーとなり、独自のデジタル捺染(プリント)技術と、共創パートナーであるアベイルの3Dデジタル技術を用いて各社と連携し推進する、ファッション業界の社会課題解決に向けた取り組み。

2Dの型紙データから3Dサンプルの構築を可能とする、アベイルのアパレル向けシミュレーションソフト「VStitcher(ブイスティッチャー)」を採用している。


▲3Dのリアルな着装イメージを表示

「VStitcher」は、身長や体形を設定したアバターを通して3Dのリアルな着装イメージを表示可能。着装イメージ画面上にて丈等を調整した場合は、プリント柄を含めた3Dデジタルデータが2Dの型紙データに反映されるため、型紙の形も入ったプリントデータとして捺染機にて生地に直接印刷ができる。


▲3Dのリアルな着装イメージを表示

今回の取り組みでは、「VStitcher」の3Dデータを消費者がタブレットで操作し、着装シミュレーションが出来るように開発。これにより必要数量のみの受注生産がしやすくなり、試作品の削減に加え、過剰な在庫を持たない生産を実現する。

さらにエプソンのデジタル捺染機「Monna Lisa(モナリザ)」は、生地に直接印刷できるインクジェットプリンターで、顔料インクを使用した場合、アナログ捺染の染料インクを使用した印刷と比較して、水使用量を約96%削減でき、サステナブルな印捺プロセスを実現する。

「ECOALF」は、アパレルブランドとして初めてこの取り組みに参画し、両社の技術を活用したカスタムオーダードレスを展開する。3社での共創活動に取り組むことにより、試作品レスと在庫レス、さらに印刷工程における水使用量を極小化した持続可能なファッションの流通サイクルの推進に貢献していく考えを示した。

3社による実証実験として、6月14日~19日の期間、「阪急うめだ本店」の特設会場にて開催されるSDGsに特化したポップアップ・イベント「GOOD VIBE FROM SEA」に出展する。

会場の「ECOALF」ブースでは、「アパレル3Dソリューション×無在庫ビジネス構想」を想定した実店舗として、タブレット端末でのバーチャルフィッティングを体験し、実際にオーダーが可能。水族表現家 二木あい氏の作品を用いたカスタムオーダードレス(2万9700円/税込)の予約購入ができる。

今回の共創に「ECOALF」が取り組むきっかけ1つに、ファッションに不可欠な要素である柄やプリントを、サステナブルファッションにおいても環境への負荷を低減しながら提案したいという思いがあったとし、その取り組みの第1弾となる商品のフォトプリントとして、二木氏が撮影した美しい珊瑚の作品を採用した。

「ECOALF」は世界の海で活躍する二木氏が水中から届ける「共に生きる」というメッセージに共感し、これまでも協業を図っている。今回も環境負荷の課題解決に向けた本取り組みの発信力をより強めるため、二木氏とのコラボレーションに至った。

珊瑚や魚など海の中にある美しい色を守っていきたいという思いを込めた「ロスト・カラーズ~失われてゆく海の色~」をテーマにしたイベントブースでは、カスタムオーダードレスに加え、夏向けのドレスやカットソーアイテムを中心に、スニーカーや雑貨を含めたウィメンズ/メンズの新商品を展開する。


▲カスタムオーダードレスのプリントに採用した 珊瑚の作品【Photo by Ai Futaki】

本イベントで装飾に用いられる二木氏の作品をプリントした布製タペストリーなどは、「Monna Lisa」で印刷し、イベント終了後は、二木氏の新たなアート作品としてアップサイクルされ再利用する。

世界で2番目に環境を汚染している産業といわれるファッション業界は、衣服の大量生産・大量消費・大量廃棄に伴う環境汚染、CO2排出、水資源の大量消費などが問題となっている。また、ファッションにおいて重要な要素である柄やプリントは、染料やプリント工程で生じる環境負荷の低減が困難なことから、サステナブルを目指したアパレル製品は無地が多いという現状がある。

こうした状況において「ECOALF」は、リサイクル素材や環境負荷の低い天然素材のみでつくられた衣服や雑貨を製造・販売するサステナブルなファッションブランドとして、今回の協業に至ったとしている。


▲「UPCYCLING THE OCEANS」の仕組み

「ECOALF」は今後、日本の企画で本取り組みの実装を検討するとともに、日本発のグローバル企画としての展開や、三陽商会の他のブランドへの導入を推進し、サステナブルファッションブランドとして「アパレル3Dソリューション×無在庫ビジネス構想」の市場認知拡大を図るとしている。

今後も顧客やパートナーと共に取り組むことで、個々では成しえない新たな社会課題解決につながるビジネスモデルの創出を目指す考えを示した。





RECOMMEND合わせて読みたい

RELATED関連する記事

RANKING人気記事