2024.10.14

【<東証グロース上場>Aiロボティクスに戦略を聞く】龍川誠社長「不屈の心で夢を現実に、次は時価総額1000億円」

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龍川誠社長


生ビタミンC配合化粧品の「Yunth(ユンス)」などを展開するAiロボティクスは9月27日、東証グロース市場に上場した。同社の2024年3月期の売上高は、前期比約2倍の70億6100万円だった。同社は上場後1年以内に時価総額1000億円を目指すとしている。龍川誠社長は、「苦境でも諦めずに上場を果たせたことは素直にうれしいが、ここからが本当のスタート。これからも成長率を意識した経営を行い、すべてのステークホルダーに還元していきたい」と話している。龍川社長に、上場を果たした現在の心境や同社の強み、今後の事業戦略などについて聞いた。


目標は3期連続2倍の増収


――上場したことについての感想を聞きたい。
 
社員の日々の血のにじむような努力と、取引先や関係者の支え、そしてお客さまあってこそのたまものだ。心から感謝している。

上場は、創業時からの一つの夢であり、達成できたことは本当にうれしく思う。
 
当社の2024年3月期は、売上高・利益ともに、前期比2倍の業績を達成した。2025年3月期と2026年3月期の社内目標はどちらも、前期比2倍の成長と設定している。
 
目標通りの業績を上げることができれば、時価総額1000億円は夢ではないと考えている。
 
――これまでの自身の振り返りを聞きたい。
 
当社は元々、「HowTwo(ハウトゥー)」という、美容系動画メディアを運営する会社として創業した。
 
当時の経営は、苦境の連続だった。メディア事業は、将来の売り上げなどの数字がなかなか読めないところがあった。私自身も、経営者としてかなり未熟だった。日々、生き残れるかどうかの瀬戸際にいた。
 
手元の資金がなくなり、来週にはキャッシュアウトしてしまうというタイミングもあった。泥水をすするような思いを何度もしてきたが、その都度何とか踏ん張って、極限まで努力してきた。
 
諦めてしまうこともできただろう。だが、諦めなかった。今回上場したことで、「諦めないことで夢はかなう」ということを体現できたと考えている。


バランスよく商品開発


――2024年4ー6月期(第1四半期)のD2C事業の売上高の約7割は、「Yunth(ユンス)」が占め、残り約3割は美容機器の「Brighte(ブライト)」が占めたと聞く。両ブランドがこれだけ短期間で成長した要因は?
 
成長要因の一つとしては、安定した新規獲得を実現している、AIを活用したマーケティングがある。もう一つとしては、長く愛用していただくための、ヒット商品を生み出す商品開発力もあったと考えている。
 
1点目に挙げたマーケティングにおいては、独自のAIシステム「SELL(セル)」を利用し広告運用を行っている。「SELL」には、当社が元々行っていたAIマーケティング事業で培ったマーケティングノウハウや、膨大な広告運用データを取り込んでいる。そのため、安定的で効率的な顧客獲得を実現できている。
 
2点目として商品開発力を挙げたが、当社は「プロダクトアウト」と「マーケットイン」の両軸を意識し商品開発を行っている。

元々行っていたAIマーケティング事業で、多くのクライアントの商材を販売してきた。そこで感じたのは、どんなに広告で新規顧客を獲得しても、LTVやリピートが伸びないと業績が伸びないということだった。
 
LTVを伸ばすにはさまざまな要素が必要だが、商品力が高いことが最も重要だ。ユーザーの嗜好を徹底的に考察し、ユーザー自身が気付かない潜在ニーズさえも商品に生かす必要がある。
 
商品開発の際に、データを徹底的に分析し、マーケットの顕在ニーズに対応する「マーケットイン」と、ユーザーがまだ気づいていない課題に対して、今まで世の中に存在しない新たな解決策を提案する「プロダクトアウト」の二つの考え方を掛け合わせることが、ヒットへの担保になる。
 
前者にはデータドリブン思考、後者には商品に対する知見とユーザー理解が欠かせない。再現性高く、市場を席巻するような商品を作るには、両者を5対5のバランスで考え、商品設計することが必要だと考えている。

そのためには、OEMメーカーとの関係性も重要だ。OEMが斬新なアイデアを実現してくれるには、商品を販売するスケールも必要だ。

さらに、ブランドストーリーやコストパフォーマンスなど、さまざまな要素が重なって、ヒットになる。

「Yunth」も「Brighte」は、ブランドとしてまだ成長過程であると捉えている。今後もより多くのお客さまに知っていただくことで、さらなる成長を遂げると確信している。

――今後の事業目標として、積極的なM&Aも挙げている。どんな会社を傘下に加えたいか。

化粧品や美容系に限らず、食品やアパレルといった、さまざまな事業領域で、魅力的なブランドや商品を保有する企業を中心に、当社のグループにジョインしていただきたい。

具体的な内容や企業名は開示できないが、上場企業も含めて、既に動き出している。

当社グループへのグループイン後は、「SELL」やマーケティングノウハウなどを活用し、より多くのお客さまに商品を届けていただきたい。


社員年収1億円に


――龍川社長の経営理念を聞きたい。
 
「新しい自由を創造する会社」というミッションを掲げている。人々の幸せの源泉は「自由」であり、「自由」とは「選択肢の多さ」だと考えている。お客さまに対しても、社員やすべての関係者に対しても、「今までにない選択肢」をもたらすことで、より良い未来を実現していきたい。
 
今後もAIテクノロジーを駆使して、少数精鋭での事業成長を図っていく。そうした取り組みが成功した暁には、社員にしっかりと還元したい。例えば、社員の平均年収を将来的に1億円レベルまで持っていきたい。
 
過去の常識や固定概念にとらわれない、自由な未来を創っていきたいと考えている。




【記者の目】殺生せず、美容と健康追求


インタビュー中に、虫が1匹飛んできたが、龍川社長は優しく手で包み込み、外へ持っていった。龍川社長は、自らに殺生を禁じており、窓がないオフィスでも、虫がいたら外へ連れて行くのだという。同社が入居するのは六本木ヒルズの35階。虫を放すだけで、5分以上かかりそうだ。

龍川社長は日ごろから、美容や健康も強く意識しているという。食事は基本的に野菜かフルーツのみ。会食がなければ、炭水化物は摂らないという。アルコールも飲まないそうだ。

常に美しく健康であることを己に課しており、細部へのこだわりやストイックさにも、凡人ではない雰囲気を感じた。

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