日本の中小企業の海外展開を支援する菱沼貿易は、シンガポールを中心とした越境ライブコマースで1000万円を超える売り上げを何度も出している。国内でもライブコマースを手がける企業が増えてきたが、海外向けに高い成果を上げている同社には3つの秘訣があった。1つは良質なコミュニティを持つ『海外パートナー』の存在、2つ目はメーカーから販促費をもらわずに”売らないと利益が出ない”環境で真剣に商品を選ぶ『目利き力』がある。そして3つ目が、ライブコマース先進国であるアジアで磨かれたEC構築プラットフォーム『SHOPLINE』活用による、効果的な販売の仕組みの提供だ。今後、さらに販売商品や販売エリアの拡大を目指す菱沼貿易 代表取締役 菱沼一郎氏と、輸出チーム マネージャー 松林未誉子氏に、越境ライブコマースを手がけるに至った経緯や、販売を伸ばすための工夫について聞いた。
催事販売で感じたBtoCの可能性
――菱沼貿易を設立するに至る経緯は?菱沼:私は以前、商社に勤めていて、主に東南アジアで製造したものを日本で販売していました。とても忙しく、当時は起業なんて微塵も考えていませんでした。
勤めていた商社は取引先の規模が大きく、中小企業から引き合いがあっても、与信の問題でお断りしなくてはいけませんでした。仕事を覚え、管理職になりましたが、「この会社には自分の替わりがいる」と思うようになり、「それなら商社で培った経験を、取引をお断りしていた中小企業のために生かしたい」と考えるようになりました。
30歳ぐらいから起業を考えていましたが、結局、40歳で商社を辞め、独立しました。独立後、当初は前職と同じ輸入事業のみを手がけていました。例えば「中国で製造しているが、品質問題が起きて困っている。ほかに良い製造会社を知らないか?」など、お客さまから困りごとを相談され、私たちが解決しました。
▲40歳で菱沼貿易を起業した菱沼一郎氏――輸入事業から輸出事業を手がけるようになったきっかけは?菱沼:輸入事業だけ展開していたところから、少しずつ輸出も手がけるようになりました。最初は「建材」などを海外企業に販売していました。
日本の経済のことを考えると、輸出を増やしていきたいという思いがありました。「建材」以外で初めて取り扱ったのが「梅酒」でした。しかし、最初は「建材」同様、BtoBで海外に販売していくことを目指していました。
海外の食品商社などに営業し、大きなロットで卸したいと考えていました。しかし、商品は良いものですが、海外で認知度はなく、価格も高かったため、うまく取引先を開拓できませんでした。
そんなときに友人から「シンガポールでコーヒーフェスティバルというイベントがあるから、そこに出店しないか?」と誘いを受けました。アルコールを現地で売るのは許可申請など簡単ではありませんが、イベント主催者がその許可を取っているとのことだったので、「試しに売ってみよう」と15種類を販売してみました。
▲「シンガポールコーヒーフェスティバル」での販売の様子イベントで販売するために600本を輸送し、4日間のイベントで1日100本程を販売し、余ったら現地の営業に使おうと考えていました。1日目は法人向けの催事販売で、110本くらいを売ることができました。このペースなら、BtoC向けの2〜4日目で目標を達成できると思っていたところ、2日目に220本が一気に売れました。
さらに、箱買いする人がいたり、一度購入した人が5人くらい引き連れて来てくれたりして、3日目には600本が全部売り切れてしまったのです。ブースに殺到するお客さまを捌くのが大変で、12時間トイレに行けないくらいでした。
▲3日目には用意した商品が完売商社にいたので、法人取引じゃないと、多くの商品を販売できないと思っていましたが、良い商品で、その魅力を伝えることができれば、個人のお客さまでもたくさん買っていただけるということを身を持って知りました。