2023.05.03

【健康食品通販の専門家に聞く】成眞海弁護士「記事LPは依然悪質、ステマ規制に期待」

成・眞海(セイ・シンカイ)弁護士


景品表示法や薬機法、特商法などに詳しい成・眞海(せい・しんかい)弁護士は、健康食品の通販の広告について、記事広告や記事型のランディングページ(LP)には、依然として、景表法の不当表示に該当するような広告が多く見られると指摘している。「消費者庁が昨年取りまとめた『ステマ規制』に照らせば、アフィリエイト広告の記事LPの多くが、ステマに該当すると思われる。実効的なステマ規制が行われるか注視したい」と話している。



行政処分の執行が減少


――2022年の、健康食品通販市場に対する法規制がどうだったかについて聞きたい。


まず、景表法について最近は、健康食品の販売会社に対する措置命令がほとんど行われていない。

とはいえ、景表法の措置命令が、主に通販企業に対して行われていくことは、今後も間違いないだろう。事業者は、十分注意して広告表示を行うべきだ。

2021年8月に施行された薬機法の課徴金制度についても、動きがない。

ただ、薬機法に課徴金制度が導入された背景を考えると、最初の課徴金納付命令の対象は、通販企業ではない可能性が高いのではないかと考えている。

薬機法の課徴金制度は、ノバルティスファーマの医療用医薬品「ディオバン」をめぐる臨床データの改ざんがきっかけだった。健康食品市場における薬機法違反の広告は、景表法でも対処できるケースが多い。課徴金納付命令を行うのであれば医薬品関連の事例になるのではないか。

いずれにせよ、健康食品の通販企業は、景表法と特定商取引法とにしっかりと対応するようにしておけば、薬機法上も違法となるおそれは少ないだろう。
 

多くの記事LPがステマに


――景表法ではステマ規制が導入された。どう見るか?

ステマ規制の検討会の報告書を見る限りでは、影響がありそうだ。

報告書の内容を見ると、施行後は、第三者に表示を依頼する場合も含めて、「広告」「宣伝」「PR」などといった文言を使用することが求められる。ただ「PR」と書けばよいわけではない。視認しにくい末尾の位置や、周りの文字と比較して小さい文字の場合、「不明瞭」に該当するとして、不当表示となる可能性がある。

それに照らすと、健康食品や化粧品のウェブ広告でよく見られる記事広告や記事型のLPは、基本的にステマに該当してしまう。

報告書では、通常のランディングぺージ(LP)内の商品体験談や専門家コメントについても、ステマに該当する場合がある旨が記載されている。これらを含むLPはとても多い。実際に、行政がどこまで取り締まれるのか、未知数だ。

ステマ規制については、課徴金納付命令が行われない予定となっている。そういった点も含め、ステマ規制にどこまで実効性があるのか、疑問がある。

 

無法地帯の記事LP


――現在の健康食品の通販市場について、どう見ているか?

記事広告や記事型のLPは、無法地帯といってもいい。健康食品の定期購入の記事広告で、初回の価格しか書いていないケースや、「お試し」をことさら強調するような広告はザラにある。

ステマ規制によって、こうした広告の取り締まりが強化されるのを期待したい。

――電話勧誘販売の対象範囲が拡大したが。

もともと、雑誌の広告などを対象に、ある商品の広告を見て電話してきた顧客に、別の商品のクロスセルを提案すると電話勧誘販売に当たるという規定は、存在していた。ただ、逐条解説などを見ると、明らかに関係ないものをクロスセルした場合を指している。単品の商品の広告から定期購入への引き上げが電話勧誘販売に該当するということは、今回から急に言い出したことだ。

消費者庁は、ガイドラインを策定するなどして、対象範囲をさらに明確にすべきだ。電話勧誘販売に該当するか否かで、事業者のコスト負担が大きく異なる。

事業者には、広告内容を見直す必要がある。それだけでなく、コールセンターのオペレーターの対応や、書面交付、クーリングオフを申し出る顧客への対応を見直すなど、新たな対策が必要になる。




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