2023.03.16

EC市場が成長余地広げる『4つのシナリオ』とは?【EC市場の未来予測を聞く(中編)】

デジタルコマース総合研究所の本谷知彦代表(左)とMirakl 佐藤恭平社長(右)

【EC市場の未来予測を聞く(全3回)】
Mirakl 佐藤恭平社長 × デジタルコマース総合研究所 本谷知彦代表


フランス発のマーケケットプレイス構築SaaSを提供するMirakl(ミラクル)は今年1月、考察レポート「国内BtoC‐EC市場の近未来予想と活性化への期待」を発表した。同レポートでは、国内EC市場が2030年頃にピークアウト(頭打ち)するという予測を掲載している。レポートを作成したデジタルコマース総合研究所の本谷知彦代表は、前職の大和総研時代に、経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」を2014年から7年連続で担当している。長年、EC市場規模を算出してきた本谷氏の予測は説得力がある。デジタルコマース総合研究所の本谷代表と、Miraklの佐藤恭平社長に、EC市場の成長余地を広げるための4つのシナリオ策について聞いた。



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――4つのシナリオとは?

本谷:1つ目のシナリオは、既存の大手プラットフォーマーがさらなるGMV(流通総額)が拡大するというものだ。すでに国内EC市場の7割以上を大手プラットフォーマーが占めている。

ただ、経済産業省がプラットフォーマー規制に取り組んでいることなどを踏まえ、世の中の趨勢(すうせい)を考えると、現状からさらにシェアを伸ばして8、9割に達するのは考えづらい。もちろん、もっと伸びる可能性はあるが、そろそろ均衡点を迎えるのではないかとみている。

2つ目のシナリオは、新興プラットフォーマーがシェアを伸ばすというものだ。中国のピンドゥオドゥオ(拼多多)のように、日本でも新しいプラットフォームが登場し、急成長を遂げて国内EC市場の成長をけん引するというシナリオだ。

ただ、これもプラットフォーマービジネスはネットワーク外部性といわれる、利用者が増えることで、サービスのメリットや価値が利用者に還元される性質があるため、既存の大手プラットフォームが台頭する中に割って入るのは厳しいだろう。

3つ目のシナリオは、D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)のさらなる飛躍だ。個人的には、D2Cに期待している。さらにプレーヤーが増えてほしいし、市場規模ももっと大きくなるべきだと思う。

ただ、現状においてもD2C市場規模はそれほど大きくない。仮にマーケットサイズが1.5倍や2倍になったとしても、全体で見たときのインパクトはそこまで大きくない。

国内のD2Cは比較的、小振りなブランドが多い。大手メーカーが仕掛けるブランドもあるが、まだ模索しながら取り組んでいる面もある。

ユニクロなど大手SPAが直販に注力する動きもある。ただ、リアルとECの二刀流で事業展開していることもあり、D2C事業は緩やかに成長している印象もある。

米国でナイキが直販率を引き上げる選択をして、D2Cを急拡大させるような動きが日本でも見られると、市場拡大に期待が持てる。

国内の流通構造が出来上がっており、メーカーが卸企業や小売企業を無視した動きを取りにくい状況もあるようだ。

――既存モールも新興モールもD2CもEC市場の成長余地を広げるには物足りない面があるようだ。第4のシナリオは何か?

本谷:4つ目のシナリオが、ミディアムサイズプラットフォーマーの台頭だ。ミディアムサイズプラットフォーマーというのは、大手小売企業や有力メーカーなど、すでにブランドや顧客基盤を持つ企業がマーケットプレイス機能を持ち、MDの幅を広げ、GMVの拡大を目指すモデルのことだ。

大手小売事業者が自社のMDだけに凝り固まるのではなく、MDを増やしていく流れはあってしかるべき。海外ではこの流れはすでにあり、日本でも兆しは見えている。このシナリオが短期・中期的な目線では、最も現実的な解ではないかと思う。


<<前編:2030年頃、国内EC市場がピークアウトする

後編:日本でも中堅プラットフォーマーは台頭するか?!>>



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