2023.03.09

2030年頃、国内EC市場がピークアウトする【EC市場の未来予測を聞く(前編)】

デジタルコマース総合研究所の本谷知彦代表(左)とMirakl 佐藤恭平社長(右)

【EC市場の未来予測を聞く(全3回)】
Mirakl 佐藤恭平社長 × デジタルコマース総合研究所 本谷知彦代表


フランス発のマーケケットプレイス構築SaaSを提供するMirakl(ミラクル)は今年1月、考察レポート「国内BtoC‐EC市場の近未来予想と活性化への期待」を発表した。同レポートでは、国内EC市場が2030年ごろにピークアウト(頭打ち)するという予測を掲載している。レポートを作成したデジタルコマース総合研究所の本谷知彦代表は、前職の大和総研時代に、経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」を2014年から7年連続で担当している。長年、EC市場規模を算出してきた本谷氏の予測は説得力がある。デジタルコマース総合研究所の本谷代表と、Miraklの佐藤恭平社長に、レポートで伝えたいことや、EC市場の成長余地を広げるための策について聞いた。



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――今回、レポートを発表した狙いは?

佐藤:欧米発のサービスをそのまま展開しても、日本の実情に合わないケースがあると考えた。国内EC市場をしっかりと分析した上で、われわれのメッセージを発信していきたいと思い、本谷氏へレポートを依頼した。

――本谷氏はどういう思いでこのレポートをまとめたのか?

本谷:EC市場を見続けていて、ずっと感じていることがある。このままだと国内EC市場が近い将来、飽和してしまう可能性がある。成長を早期に止めないためには、何かしら変革が必要だと感じている。そういった状況や打開のシナリオを紹介できればと考えた。

――どういう懸念を国内EC市場に抱いているのか?

本谷:2021年の国内EC市場規模(物販)は13兆2860億円で、EC化率は8.7%だった。CAGR(年平均成長率)を5年単位で見てみると、成長率は明確に下がっている。2016‐2021年の成長率は、実際の数字は年10.67%だが、コロナ禍の巣ごもり消費の影響を除いた理論値は年8.29%の成長率だとみている。2022年の国内EC市場規模(物販)はまだ発表されていないが、私の予測だと4~5%の伸びだと思う。成長率は今後、さらに落ちていくだろう。




類似規模の市場と比較


――近い将来、国内EC市場の成長が止まるということか?

本谷:今のまま行けば2030年ごろに国内EC市場はピークアウトを迎えるとみている。それは類似する規模の市場と照らし合わせると予測が立てられる。



コンビニ市場は1974年にスタートし、45年後の2019年にピークアウトしている。携帯電話市場は1992年にスタートし、28年後の2020年にピークアウトしている。コンビニ市場は物理的な出店と配送網が伴うので簡単には伸びない。だからこそ、ピークアウトが45年もかかった。EC市場はそこまで長くはもたないだろう。

携帯電話市場はバンドワゴン効果(周囲の人が使っていて自分も使いたくなる効果)によって、あっという間に普及した。EC市場にバンドワゴン効果はあまりないので、携帯電話市場ほど早くはピークアウトしないだろう。

そう考えると、28年以上、45年以下の30~35年くらいが一つの目安になる。楽天グループが設立した1997年を国内ECの元年とすると、2027年~2032年にピークを迎える可能性があると分析している。

――10年以内に国内EC市場の成長が止まるという話は、業界関係者にとっては耳の痛い話かもしれない。

本谷:業界関係者にはセンセーショナルな話かもしれない。ただ、このことに気付いている人もいるだろう。気付いていても気付いていない振りをしている人もいる。現実を直視した上で、戦略を考えた方がいい。レポートでも成長を継続させるための4つのシナリオを提案している。


中編:「EC市場が成長余地広げる『4つの成長シナリオ』とは?」につづく>>


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