2023.01.27

【<記者座談会④>2023年のEC市場を読み解く】注目のEC事業者は?ブランド巧者が市場で優位に

【2023年 注目のEC事業者】

ブランドの成長が市場をけん引


後藤:2023年に注目のEC事業者について、三浦記者はどうか?

三浦:ペットフードでは、フレッシュドッグフードという、手作りで冷凍のものが今後伸びると予想する。フレッシュドッグフードは、日本のドッグフード市場において、全体の1%程度の売り上げだが、海外では10%程度を占めている。海外と同様に、日本もこれから400億~500億円の市場規模に成長すると予測。市場拡大の中心にいるのは、バイオフィリアやPETKOTOという会社で、今後も増収が続くと思う。

後藤:フレッシュドッグフードの定義について詳しく。

三浦:カリカリのドライフードではなく、人間が食べる食材を使い調理するもので、人間も食べられるようなもの。健康志向や見た目、おいしさがポイントで、国産食材を使い無添加の安心感がある。無添加はすでに当たり前になりつつある。


再現性の高さでヒット


後藤:永井記者はどうか?

永井:化粧品だと2社あり、I‐neとプレミアアンチエイジングに注目している。ブランディングが非常に巧妙で、特にヒットブランドの再現性が高い。例えば、I‐neの「BOTANIST」という主力ブランドのシャンプーは累計で1億本売れている。同じく「YOLU」というシャンプーのブランドもあって、それも1年で1000万本ぐらいのヒットブランドになった。2023年もそういった再現性の高いヒットブランドが出てくると思う。

後藤:再現性とはどういうことか?

永井:再現性とはヒットブランドを次々と生み出しているという意味。例えば「YOLU」は、ナイトケアというありそうでなかったもの。シャンプーは夜に使うのが当たり前だが、わざわざナイトケアというネーミングで押していくことで市場を開拓した。同業他社から「うらやましい」などの声が上がっている。「BOTANIST」も同様で、ありそうでなかった市場を取りにいっているところがポイントだ。

後藤:マーケティングが強いことを指すか?

永井:そうなる。しっかりブランディングしたあとマーケティングを入念に行っている。販売チャネルは、従来までECが主だったが、今は圧倒的にリアルになっている。ECで注目を集めてから実店舗に広げていく戦略になった。

プレミアアンチエイジングも同様で、他の大手が攻めきれない部分をうまく攻略している。ブランディングの面も大切にされている。

後藤:一つのブランドがきちんと育てば、他にも展開していける可能性がある。他の企業はどうか?

永井:アパレルの「SHEIN」に注目している。謎のブランドと言われ、取材も困難だが、売り上げは2兆~3兆円と言われている。米国を中心に展開し、日本でもZ世代を中心に人気が高まっている。クラッチバッグなどの価格が300円で売られている圧倒的な低価格戦略に加えて、上手にSNSでの発信も組み合わせてポジションを確立。世界で展開する有名なアパレル企業などを超えている、と言われたりしている。

後藤:私も「SHEIN」は注目している。黒田記者はどうか?


パーソナライズも注目


黒田:2023年は、よりいっそうパーソナライズ化が進むと思う。スープのサブスクを展開するGREEN SPOONという会社があり、私もユーザーだ。日頃の働き方や食生活、苦手な食材など、約10個の細かい質問に答えるとその人に適したスープやスムージーなどを提供している。私が体験して良かったことも踏まえて、2023年はより精度の高いパーソナライズ化の製品が増えると予想する。

後藤:購入前の「診断」みたいな感じか。他には?

黒田:食品ロスECのKuradashiにも注目している。食品の生産者やメーカーなどから、訳あり品などとして、協賛価格で買い取り販売している。こうした取り組みはあるようで、実はなかった。売り上げも一気に伸びていると聞く。



<記者が考える2023年のキーワード>


▲黒田海椰 記者

「高まる越境EC需要」

依然としてコロナ収束は見えず、インバウンド需要も期待できない。2023年はさらに、越境ECのニーズが高まるだろう。

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