【さらに進むOMO展開】
リアルでリッチな体験を提供
手塚:2023年に注目すべきマーケティングトレンドについて聞きたいと思う。行動制限がなくなり、リアルに人流が戻ってきている。その流れからも、リアルとネットを融合させるOMOへの関心はより高まると思う。OMOは2023年、どのように進化していきそうか?
星野:OMOについてはあまり詳しくないが、健康食品や化粧品業界だと、あまり実店舗を持つケースは多くない。ファンケルやDHCなど、かなり大手が百貨店や路面店を展開している。年商が100億円に満たない中小企業だと、ポップアップストアを出すのが一般的で、その出店場所や規模が拡大している流れはある。
一般的なスキンケアなどのブランドでは、小さくポップアップを出しても、なかなか人目につかない。差別化できている商品や、あまり市場で見ないような商品ならば、ポップアップ展開を強化していく事業者も増えるのではないかと思う。
体験を重視した店舗
手塚:ポップアップでは、どのようなサービスを提供しているのか?
星野:ポップアップでは、お客さんが買うこともできるし、試すことができるケースも多い。インフルエンサーを起用しているブランドの場合、ポップアップにインフルエンサーを招き、対面でコミュニケーションが取れることを、付加価値として提供するケースも多い。
手塚:ちょっと変わったポップアップの取り組みは?
星野:尖った商品であれば、体験を重視した店舗「b8ta(ベータ)」に出品するケースもある。自分たちでポップアップを出すよりも効果を得られることもあるようだ。ほかにも、「TSUTAYA(ツタヤ)」など、さまざまな店舗でポップアップコーナーを設けているので、そういうところに委託し、リアルとの接点を持つ事業者も増えていると思う。
手塚:ポップアップではないが、ゴルフEC大手の「ゴルフダイジェストオンライン」が2022年、初めて実店舗を出した。ECサイトでよく売れている大手メーカーのブランドを扱うのではなく、コアなファンがいる職人が作ったゴルフクラブを取りそろえて、実店舗の魅力を作っている。
ECサイトでは、やはり大手メーカーの人気商品の方がたくさん売れるため、どうしても目立つ。ニッチなアイテムは埋もれてしまいがちだ。大手メーカーの商品で満足しない顧客にとってはそうした商品をなかなか見つけにくい。そういうコアなファンが欲しい商品をリアルでそろえることで、体験する価値も提供し、ECサイトの利用にもつなげたい考えのようだ。