私、工藤一朗(くどう・いちろう)が代表取締役を務める株式会社ライフェックスではこれまで、通販・ECをはじめとした、数多くの企業のブランディングの構築から新規獲得、CRMまでを一気通貫で支援し、成功に導いてきた。この連載では、アフターコロナの新規獲得に関するノウハウを、余すところなくお伝えしていきたい。
前回はCRM活動で、ブランドを適切に伝えていく意味をお伝えした。
【前回記事リンク:
https://netkeizai.com/articles/detail/7766】
今回はブランドアイデンティティー(BI)で決めた要素を、どのようにCRM施策に生かすかの戦術について、お伝えしていきたい。
メインメッセージで顧客視点と理念を一致させる
CRM施策に落とし込む「メインメッセージ」という考え方がある。このメインメッセージに沿った施策設計を作ることが、顧客視点と理念を一致させることにつながる。
メインメッセージは、BIの中の重要な要素だ。
企業・ブランドが、「顧客に対して何を約束するのか(カスタマープロミス)」という重大要素を、新規顧客向けにメッセージとして共有し、伝えていく役割を果たす。
カスタマープロミスは言葉の通り、顧客との「約束」のことだ。いわゆる理念を指す。メインメッセージは、カスタマープロミスで公言したことを「どう実行していくか」、プロミスを果たすための宣言と言える。
つまりカスタマープロミス(理念)が根幹にあり、それを伝えるのがメインメッセージだ。
しかしメインメッセージだけでは、ブランドの理念の全てを伝えきれない。メインメッセージは新規顧客向けに、優先度・重要度を加味して限定された言葉になるからだ。
メインメッセージで伝えきれないものに関しては、「サブメッセージ」で補う。サブメッセージは、購買後や、2回目3回目と購入したリピート顧客に向けて、段階的に伝えるメッセージのことを指す。
そして、このメッセージを具体的なCRM施策に落とし込んでいく。この落とし込みは、自分たちの価値やサービスの領域と、顧客視点をつないでいくような作り方になる。
したがって、カスタマープロミスとメインメッセージというBIにひも付けた施策設計は、顧客視点を踏まえたCRM施策作りには欠かせない考え方や戦術なのだ。
コミュニケーションチャネルの選定「LINEは外せないCRM施策の一つ」
では、メインメッセージをCRM施策に落とし込む時、具体的にどのように設計すればよいのだろうか。
前述したように、メインメッセージは、新規獲得の領域、つまり広告のクリエーティブに反映させるケースが多い。一方サブメッセージは、リピート顧客のCRM施策に反映される。
〈主な事例〉メインメッセージ・・・新規顧客向け企画の広告など
サブメッセージ・・・メルマガ・同梱物・リピート向けの企画など
ここで重要なのが、メッセージを伝えるコミュニケーションチャネルの選定だ。コミュニケーションチャネルとは、メールやLINE、SNSなどを指す。
各企業がコミュニケーションチャネルの選定を迫られている中で、いまだにデータベースとしてあるメールマーケティング1本で行っている企業も少なくない。SNSアカウントはあるが、コミュニケーションツールとしてではなく、あくまで情報発信ツールとして活用している企業も多い。そしてその中で感じるのは、LINEをうまく活用できている企業が非常に少ないということだ。
情報発信だけでなく、顧客とのコミュニケーションは重要である。
しかし、サブメッセージ領域に引き込む上で、顧客を知るという一定のタッチポイントがあまりに少ない。企業が保有する、コミュニケーションに欠かせない顧客のデータベース量が圧倒的に少なくなってきている。それゆえに、価値のあるCRM施策が作れていないケースが散見されるのだ。
この点においてLINEは、一定の顧客情報を取りやすい機能が多く備わったコミュニケーションチャネルと言える。このLINEを活用したCRMは、今後外せない施策の一つとなるだろう。
しかし、実際には、LINEを活用していても、クーポン配布一辺倒の施策しか練られていないケースも多く、非常にもったいないと感じている。