私、工藤一朗(くどう・いちろう)が代表取締役を務める株式会社ライフェックスではこれまで、通販・ECをはじめとした、数多くの企業の、ブランディングの構築から新規獲得、CRMまでを一気通貫で支援し、成功に導いてきた。この連載では、アフターコロナの新規獲得に関するノウハウを、余すところなくお伝えしていきたい。
前回は、認知の初期段階からブランディングとCRMを重視し、情緒的価値を感じるブランド体験を作り、購買につながる導線作りをする必要性についてお伝えした。
【前回記事リンク:
https://netkeizai.com/articles/detail/7628】
今回は、CRM活動について、さらに深掘りしてお伝えしていきたい。
CRM活動とは、ブランドを適切に伝えること
みなさんにはお気に入りのレストランはあるだろうか?
あるという人は、おそらくそのお店の料理、価格や価値、雰囲気、そして接客態度などに好感を持っていることだろう。
では、ECブランドではどうだろうか。届いた商品は見える。価格や価値も分かる。しかし多くの場合、お店(会社)の雰囲気は見えず、どんな人が働いているのかも分かりにくい。つまりECブランドにおいては、「⾏きつけ(継続)」になる重要な要素である「店(ブランド)の雰囲気」や「接客(マインド)」が⾒えにくいのだ。
だからこそCRM活動に注力し、ブランドやマインドを伝えることができれば、価格や商品以外の要素において、競合他社に対して優位性を持つことができる。
CRMには、SaaSツールなどを駆使した専門的なテクニックも多数存在する。だが、そういった細かなテクニックはさほど重要ではない。CRMの本質は、ブランディング活動にも通じるものだ。
CRMとは要するに、「顧客と良い関係をつくっていくこと」だ。前述したブランドアイデンティティーにより構成された自社のブランドを、さまざまなブランド体験として伝え、共感してもらえれば、おのずと顧客との関係は良くなると言える。
「CRM活動」という名称こそつくが、その本質となるのは、ブランド・アイデンティティーを適切に伝えていくことなのである。
「企業思考」ではなく「顧客満足」の視点がCRMの成功につながる
当社でこれまで、約300社のブランドを支援していく中で、新規獲得やCRMの施策で、「うまくいく場合」「うまくいかない場合」というのをみてきた。
失敗したケースをひも解くとブランドの一貫性がなく、ただ施策を行うことが、失敗の要因となったケースが極めて多い。
おそらく、そうした施策には「企業思考」「商品思考」の要素が強く反映されてしまっているため、本来の目的である「顧客満足度」との間に、乖離(かいり)が生じてしまっているのだろう。
「お客さまが大事」とはどのブランドでも言っているのだが、いざ施策の要件整理を行うと、「事業者満足」「事業者都合」になっていることが、残念ながら多いのだ。
だからこそ、事業者、消費者、製造者それぞれ「三方よし」でwinwinになれる施策なのかを突き詰めて考えることが重要である。
それでは、「三方よし」の観点で顧客満足が実現できる、販促や企画の施策をどのように作れば良いのだろうか。
鍵となるのは、顧客起点のCRMである。
つまり、これまでにお伝えしたブランドアイデンティティー構築(BI)の要素をすべて出口戦略としてどのようにアウトプットとしてつなげるかを体現できれば、ブレることのないブランド体験を提供し続けられるのである。
「この部分のBIはPR、この部分のBIはCRMに反映させる」といったようにBIを全てもれなく踏襲することで、ブランドの一貫性を保ち、プランニングに結びつけていく。