2022.12.08

熊本県高森町、ふるさと納税寄付金8億円から32億円に 秘訣はレビュー数トップのコメの返礼品開発

高森町政策推進課 工藤健裕〈けんゆう〉主事


阿蘇五岳の一つである根子岳(ねこだけ)の麓に位置する熊本県高森町では、2021年度のふるさと納税の寄付金額が、前年度比3.8倍の約32億4000万円になり大幅にアップした。背景には、中間事業者のサイバーレコードから、返礼品開発の支援を受けたことがあるという。サイバーレコードが開発した、コメの返礼品は、楽天市場に投稿されたレビューの件数が累計1750件を超えるなど、人気となっている。レビュー件数は、楽天市場に掲載されている、全ての「コメの返礼品」の中でも最も多いという。



阿蘇米にストーリーを


高森町は、熊本県の最東端に位置する地方自治体だ。大分県・宮崎県との県境にある。地域にはローカル線の南阿蘇鉄道が走っており、主要な観光資源の一つとなっている。観光・農業・畜産の盛んな地域だとしている。

同町では2015年にふるさと納税事業を本格化させた。当初は、あか牛の切り落としや、ステーキ、ハンバーグなどを主な返礼品としていた。

ECサイトの運営代行などを行うサイバーレコードの支援を受け始めたのをきっかけに、寄付金額が急激に伸び始めたという。2019年度の寄付金額が約1億5000万円だったが、支援が開始した2020年度は5.6倍の約8億5000万円となった。2021年度はさらに3.8倍に伸びたとしている。

寄付額伸長の立役者である、コメの返礼品「阿蘇だわら」には「訳あり品で、量が多く、選ぶとフードロス対策につながる」というストーリーを持たせているという。


▲ヒットした返礼品「阿蘇だわら」のクリエイティブ

「阿蘇だわら」のランディングページでは、①レビュー件数が多い②ランキングで1位を獲得③阿蘇の天然水で生育④お米マイスターが厳選⑤コロナの影響で飲食店に卸すはずだった、余剰在庫のコメを使用⑥返礼品として選ぶとフードロス対策になる――といった点を訴求している。

高森町によると、2021年度の寄付金の内、およそ2割が、「阿蘇だわら」を返礼品とするものだったとしている。

サイバーレコードでは、クリエーティブの制作にも注力。ランディングページや楽天市場内の広告を通じて、「阿蘇だわら」についてユーザーに、より分かりやすく訴求できるようにしたという。

サイバーレコードでは、ユーザーのレビューを参考にしながら、返礼品の改善を繰り返し行っているという。

例えば、レビューの中に「出荷が遅い」といった投稿があれば、配送スピードを上げるための改善施策を実施。レビューへの返信も徹底して行うようにしたという。

「味が落ちた」といった投稿があったときには、「コメを冷蔵庫に入れることで品質を保てる」旨を書いた説明書を、商品に同梱することを提案したこともあったという。
 

寄付金はマンガ学科の支援に


高森町では、急増した寄付金の活用を進めており、22年度の当初予算では、約50の新規事業を立ち上げたという。

同町では23年4月、南阿蘇地域の唯一の公立高校である高森高校にマンガ学科を新設する。公立高校のマンガ学科は、全国で初だとしている。

ふるさと納税の寄付金は、マンガ学科の漫画制作・学習の環境整備の費用や、寮整備の費用などにも充てられるという。

町の観光資源である南阿蘇鉄道は、2016年に起きた熊本地震で被災し、現在も一部運休となっている。ふるさと納税の寄付金は、鉄道の復興支援にも充てられている。2023年の夏頃には、鉄道が復旧する見込みだとしている。

同地域は豪雨・降灰などの災害も多い。そのため、避難所の発電機の購入費用や、避難所同士をZoomで結ぶための設備投資にも、寄付金が充てられているという。

「寄付金額が増えて、阿蘇のお米を知ってもらえるようになり、結果的にコメ以外のことも多く知られるようになっている。関東圏だけでなく、近隣都市である福岡の人からの寄付も多い。交流人口や関係人口の増加にもつながっている」(高森町政策推進課・工藤健裕〈けんゆう〉主事)と話す。

高森町のふるさと納税ページのアクセス数は、2019年度は年間7万3000人だった。2021年度は32倍の234万人になったとしている。

 
サイバーレコードの返礼品開発の詳細はこちら
https://www.cyber-records.co.jp/furusato-plan



RECOMMEND合わせて読みたい

RELATED関連する記事

RANKING人気記事