2022.10.19

Adobe、米国のホリデーシーズンのEC市場動向を予測 売上高は前年比2.5%増、食料品の消費額が過去最高に

Adobeは10月12日、2022年のホリデーシーズン(11月1日~12月31日)におけるオンラインショッピング予測を発表した。米国におけるオンライン売上高は前年比2.5%増の2097億ドルに達すると予測。消費者がホリデー期間中の食事をオンラインで調達すると見込まれることから、食料品の消費額が過去最高の133億ドルに達すると予測した。その他、エレクトロニクス、玩具、コンピュータなどのカテゴリーで値引き率が過去最高を記録する見込みであること、10月の「Amazon Prime Day」や早期値引きセールがホリデーシーズン中の消費の早期化に影響する見込みであることなどを挙げた。

Adobeがこのほど発表した2022年のホリデーシーズン(11月1日~12月31日)におけるオンラインショッピング予測は、アドビの分析ソリューション「Adobe Analytics」を通じて得られたオンラインでの商取引データから、Eコマースの状況を示す最も包括的な分析で、米国の小売サイトへの1兆回以上の訪問、1億個のSKU、18の製品カテゴリーから得られたデータに基づいている。「Adobe Analytics」は、「Adobe Experience Cloud」の一部であり、米国のインターネット小売業者上位100社の85%以上が、オンラインでのショッピング体験の提供、測定、パーソナライゼーションを行うためにこのソリューションを利用している。

本予測においてAdobeは、米国における11月1日から12月31日までのオンライン売上高が前年比2.5%増の2097億ドルに達すると予想。なお、2021年のホリデーシーズンでは、長引くパンデミックへの懸念から消費者が実店舗に戻ることに不安を感じた結果、オンライン売上高は前年同期比8.6%増の2045億ドルに達した。

2022年は、「Amazon」がホリデーシーズン前に今年2回目の「Prime Day」(10月11日~12日)を実施するため、消費の前倒しが予想されるとしている。7月に実施された1回目の「Prime Day」では737億ドル(前年比20.9%増)が消費され、小売業界全体のオンライン新記録を樹立した。10月の早期値引きセールは、一部の消費者に支出の前倒しを促し、サイバーウィークの数字に影響を与えるだろうとしている。また、消費者が直面しているオフラインでの物価上昇(食費、燃料費、住宅費)や借り入れコストの上昇といった、先行き不透明な経済状況もホリデーシーズン中の消費に影響を与えると考えられるとしている。

サイバーマンデー(11月28日)は、今シーズンおよび今年最大のショッピングデーとして、前年比5.1%増の112億ドルの支出を記録すると見込まれるとの見解を示した。これに対し、ブラックフライデー(11月25日)のオンライン売上は前年比1%増の90億ドルに留まり、感謝祭(11月24日)の売上は前年比1%減の51億ドルに落ち込むと予想している。

Eコマースが日常的な活動として定着したため、消費者は大規模なショッピングデーでなくても値引きセールを期待するようになり、これらの主要なショッピングデーは目立たなくなりつつある。Adobeは、サイバーウィーク(感謝祭からサイバーマンデーまでの期間)全体の売上は348億ドル(前年比2.8%増)になると予想しており、年間総額に占めるシェアは16.3%となり、2021年の16.6%から減じることになるとしている。

Adobeのグロースマーケティング&インサイト担当バイスプレジデントであるパトリック ブラウン(Patrick Brown)氏は、「今年は10月の早期値引きセールにより、例年ならサイバーウィーク前後に発生する消費が前倒しされ、ホリデーシーズンの消費は異なった特徴を示します。今シーズンのオンラインショッピングは前年比1桁台の成長に留まることが予想されますが、消費者は今年(2022年1月~8月)すでに5900億ドル以上をオンラインで消費しており、8.9%の成長率を示していることから、Eコマース需要の堅調さは明らかだといえます」とコメントした。

Eコマースの3大カテゴリー、エレクトロニクス、アパレル、食料品を合わせた今年のホリデーシーズンのオンライン消費額は、1038億ドルと予想。これはアドビが予想する消費額全体(2097億ドル)のほぼ半分を占る。これら3つのカテゴリーは、Eコマースにおける主要な収益成長要因として台頭してきたとしている。

カテゴリごとでは、エレクトロニクスのオンライン消費額を498億ドル(前年比2.9%増)と予想。大幅な値引きは利益率と消費額を低下させる代わりに、成長を維持するのに十分な買い物客を引きつけることになるとしている。

アパレルについては、今シーズンのオンライン消費額は前年同期比で6.7%減となる407億ドルが見込まれるとし、この減少はパンデミックへの不安が落ち着いたことによる実店舗への消費者の関心の高まりを反映したものと考えられるとしている。

食料品のオンライン消費者は、消費者が自宅で過ごす時間が長くなった2020年に著しく成長した。消費者は2022年も外食を避けてホリデーシーズンを過ごすと見られ、食料品のオンライン消費が133億ドル(前年比10.5%増)に達すると予想している。

2022年のホリデーシーズンにおける値引きについては、供給過剰と消費の落ち込みに対処するため、小売業者が提供する値引き率は過去最大(32%以上)になると予測。とりわけコンピュータ、エレクトロニクス、玩具の値引率が過去最大を記録する見込みとしている。コンピュータの値引率は32%(2021年は10%)、エレクトロニクスは27%(2021年は8%)、玩具は22%(2021年は19%)に達すると予想している。大幅な値引きが予想される他のカテゴリーには、テレビが19%(2021年は11%)、アパレルが19%(2021年は13%)、家電製品が18%(2021年は4%)、スポーツ用品が17%(2021年は6%)、家具・寝具が11%(2021年は2%)を挙げた。

最大の値引きは、感謝祭とサイバーマンデーの間に発生することが予想されるとし、感謝祭(11月24日)はエレクトロニクスが、ブラックフライデー(11月25日)はテレビが最もお買い得になる日としている。11月26日には玩具、11月27日にはアパレルとスポーツ用品の値引率がもっとも大きくなり、コンピュータと家具・寝具はサイバーマンデー(11月28日)に、家電製品は12月1日に最も大幅に値引きされる見込みとしている。

パンデミックの影響により家計の管理に柔軟性をもたらす決済方法として2020年に注目を集め、オンライン収益シェアは前年比31.6%増という目覚ましい伸びを示した後払い決済(BNPL:Buy Now Pay Later)については、2022年のホリデーシーズンにおいてはこの伸びが鈍化すると予想。2022年1月から9月までの後払い決済のオンライン収益シェアは、2021年の同期間と比較すると5%の成長に留まっているとし、この成長は、景気および個人消費の落ち込みに一部支えられている一方で、大多数の消費者にはその価値が認められていないという課題も残っているとの見解を示した。

Adobeのデータおよび市場動向やSNSトレンドの分析による今年のホリデーシーズンで人気の玩具にも言及した。人気上位は、「Got2Glow Fairy Finder」(妖精飼育観察ゲーム)、「Mini Brands」(カプセルトイ)、「Squishmallows」(ぬいぐるみ)、「LOL Surprise Dolls」(ファッションドール)、「Bluey toys」、「ミラベルと魔法だらけの家」関連(キャラクターグッズ)、「ココメロン ~うたってまなぼう~」関連(キャラクターグッズ)と予想している。

ゲーム機本体の上位は、「Nintendo Switch OLED」「PlayStation 5」「Xbox Series X」。ゲームソフトは、「オーバーウォッチ 2」「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット」「NHL 23」「コール オブ デューティ モダン・ウォーフェアII」が人気上位と予想。その他、欲しいギフト上位には「Dyson Airwrapマルチスタイラー」「Apple Watch Series 8/Ultra」「AirPods Max/Pro」「Stanleyタンブラー」「ギフトカード」などがランクインしている。

駐車場受け取りサービス(Curbside Pick Up)については、消費者が、より速く、より安全なショッピング方法を求めるようになったことから普及し、2021年12月にはこの方法の利用者がオンライン注文が全体の25%に達したことを挙げ、このフルフィルメント方式は買い物客の間で定着しており、2022年のホリデーシーズンでも広く利用されるとの見込みを示した。Adobeが米国の消費者1000人以上を対象に実施した調査では、35%が今年のホリデーシーズンに駐車場受け取りを利用する予定であると回答していることを挙げ、駐車場受け取りを利用する人は、2022年11月までオンライン注文全体の25%前後で推移した後、12月22日から23日にかけて35%と利用のピークを迎えると予測した。




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