2022.09.30

なぜ中国人は「ECセール」に熱狂するのか?【データで分かる中国巨大EC市場<第1回>】


参加するのが「当たり前」のイベント


中国人ユーザーが2大セールを利用する一番シンプルな理由は、「お得だから」です。「独身の日」で商品を購入する理由を尋ねた質問の答えでも、最も多かったのは「キャンペーンでお得に買えるから」でした。



2番目の理由は「この時期に買わないと損をするから」、3番目が「既に習慣になっているから」でした。多くの中国人ユーザーにとって「独身の日」や「618」に参加することは、「当たり前のこと」になっているようです。

「独身の日」では大幅な割引価格の商品が目白押しですし、期間が長い「618」では買い物をすればするほどお得になるような仕掛けもあります。大半の国民が熱狂するイベントであるため、販促手法も各社、練りに練って展開されています。

また、ストック買いのニーズもあります。セールの期間は1年間で最も価格が安いので、何ヶ月分もの日用品、アパレル品を買おうとする消費者も多いです。

メーカーや小売店にとっても2大セールは参加するのが当たり前のイベントとなっています。どちらかのセールだけに出品するというよりは、どちらのセールでも全力で販売しているという印象です。

「独身の日」で使った金額は、やはり月収クラスによって大きく異なります。C(一般層)は501~1000元が最多となり、A(富裕層)は5001~10000元が最多になります。



商品ターゲットの月収クラスの顧客が費やす金額を理解することで、自社の商品をいかに買ってもらうかという販売戦略に生かすことができるでしょう。


2大セールはお得とエンタメが融合した「祭り」


セールというと、日本の富裕層にとっては関心のないイベントのように思えますが、中国の2大セールには多くの富裕層が参加しています。これは中国人ユーザーの国民性も関係していると思います。

中国人は値引かれれば値引かれるほど嬉しいと感じています。これは富裕層でも変わりありません。日本でも起きた「爆買い」現象を見ても分かると思います。日本でお得に買い物できることが分かると、大挙して日本に訪れて、買いまくるのです。

さらに中国ではEC化がかなり進んでいます。例えば中国の若者が服を買うときに、リアルのデパートなどではほとんど買いません。オシャレな服が便利にお得に買えるのはネットなのです。ネットが消費の中心になっている中で、ものすごくお得に買えるイベントが年2回開催されているので、中国人ユーザーは熱狂して2大セールに参加しているのです。

中国人のリアルな買い物の様子を現地で見ていて、今の日本人と中国人の「買い物に対する考え方が異なる」と強く感じました。中国ではセールが、本当にお祭りのような感じで活気があります。ただ単に「お得だから」という感覚を越えて、エンターテインメント(エンタメ)に近い感じだと思いました。

私も小さい頃、昭和の時代に親に連れられて百貨店に行くのが楽しかった記憶があります。この頃の日本はかなり元気で、買い物も楽しかったのだろうと思います。多くの中国人はそんな昭和の熱気のような中で、買い物を本気で楽しんでいます。

だからこそセールイベントへの参加率も高くなりますし、ライブコマースのようなエンタメとショッピングを融合した文化も発達しているのです。



例えば、日本のテレビショッピングで歌手の方が歌ったり、ダンサーが踊ったりとかは見られないと思うのですが、2大セール時の中国のライブコマースでは、歌あり、踊りあり、中継あり、そして買い物がある。それらがユーザーと販売する側とでインタラクティブにやりとりされています。

中国で2大セールがヒットしている背景には、お得な買い物が大好きな国民性と、その国民に向けたエンタメ要素が満載のイベントになっていることがあると思います。

今後、2大セールはメタバースへ進出するなど、さらに進化していくと思います。昨年の「独身の日」は成長率が鈍化していましたが、アンケートでは「2022年の独身の日でも商品を買うか?」という問いに90%前後の人が「はい」と答えています。



2大セールの中国人ユーザーの熱狂は冷めることを知りません。中国市場に参入する際に、「この2大セールをいかに攻略するか」はとても重要です。中国の国民性やECへの向き合い方を理解した上で、戦略を立てる必要があるでしょう。

なお、もし中国向けの越境ECや商品開発にご興味を持たれている企業様がいらっしゃれば、まずはカジュアルにオンラインミーティングにて情報交換致しましょう。


<お問い合わせはこちらから>
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScVtavJ8ZlEoLBsORZt2ESnB3md5TCiWD8LcIjllPoqQ_KDSw/viewform




【著者プロフィール】


▲NEW ORDER 森昭生代表

2008年にフューチャースコープにてIPビジネス(新世紀エヴァンゲリオン関連)のプロデューサーを担う。ガラケービジネスからスマートフォンビジネス転換期を経験。2012年に創業期のメタップスにてゲーム開発、中華圏ビジネス、アプリマーケティングに携わり上場を経験し、40歳を前に2015年11⽉に中国に単⾝渡る。

2016年7⽉に北京でSincetimes(北京華清⾶揚)に⼊社。2017年1⽉より⽇本に帰国し⽇本法⼈の取締役に就任。⽇本の出版、ゲーム、アニメ関連企業とのビジネス開発、アニメ等の原作開発、権利の獲得交渉を担当。中国では⼆次元⽂化の爆発期をリアルタイムで経験。

2018年9⽉よりSHIFTに⼊社。重課⾦ユーザーをテスターにした新規事業やローカライズ事業を⽴ち上げ、多くのクライアントに恵まれる。2020年10⽉、NEW ORDERにて起業。重課⾦ゲーマーとして年間600万円を課⾦した経験もある。


■NEW ORDER

https://neworder.blue/

RECOMMEND合わせて読みたい

RELATED関連する記事

RANKING人気記事